Bimota(ビモータ)×カワサキが本格始動。「至宝のモーターサイクル」は新章へ

公開日2022.02.10

イタリアが誇る孤高の高級モーターサイクル、ビモータがカワサキとタッグを組んで再出発を果たしました。
ビモータ×カワサキ実現の背景は?新章の幕開けを担う重要な1台が「TESI(テージ) H2」だった理由って?新生ビモータはどんな明日に向かっているの?
新時代のビモータにまつわる素朴な疑問に、カワサキモータースでビモータ事業を担当する衣畑 昌範氏と川杉 貴弘氏が答えます。

独創的なテクノロジーと、唯一無二のクラフトマンシップ

価値観の多様化が加速するなか、消費者の嗜好は年々細分化しています。「皆が買っているから」「流行っているから」買うのではなく、自分が本当に欲しいと思えるもの、自分に本当に合っているものに一層の価値を見出す――そんな人々が増えているようです。

また、コロナ禍を経験したことで、制限された生活の中でも自分なりの楽しみを見出す志向が強まり、利便性消費(購入する際に利便性を重視する)スタイルよりもプレミアム消費(自分が気に入った付加価値には対価を払う)スタイルが重視される傾向が強まっています。※1

そのような潮流にあって、趣味性・嗜好性の強い高級ブランドに対する関心も高まっています。

例えばエンスージアストに高く支持されているフェラーリ※2、ランボルギーニ※3といったハイエンドブランドは、2021年に軒並み記録的な販売台数を達成。独自の世界観をもつ高級ブランドに追い風が吹くこのタイミングで、“イタリアの至宝“と呼ばれる名門ビモータも、新章に向けて歩き出しています

イタリアのエミリア=ロマーニャ州リミニで生まれたビモータは、孤高の高級モーターサイクルブランドとして知られています。名設計者たちの独創的なテクノロジーと、イタリアの職人の手による優れたクラフトマンシップを余すことなく注入したマシンは、「イタリアの至宝」「モーターサイクル界の宝石」と称されるほどの傑作ぞろい。

あまたのスーパースポーツをはるかに凌駕する運動性能と革新性を帯びた数々のマシンで、人々に強烈な記憶を刻み続けてきました。

1966年に3人の青年がスタートしたビモータ。マッシモ・タンブリーニのモーターサイクルに対する飽くなき情熱と、空調設備機器の製造で培ったパイプ加工技術を原動力に、実力派フレームビルダーとしての活動をスタートさせた

※1 野村総合研究所「生活者1万人アンケート調査」2021年11月19日発信 

※2 Ferrari Q2 2021 Results Press Release 

※3 NEW SALES RECORD IN 2021 FOR LAMBORGHINI (January 12, 2022)

強烈な個性派設計者が創ってきたビモータの歴史

ビモータの物語は、1966年に幕を開けました。ヴァレリオ・ビアンキ(Bianchi)、ジュゼッペ・モッリ(Morri)、マッシモ・タンブリーニ(Tamburini)という3人の青年が、それぞれの名字から頭の2文字ずつを取って、Bimotaと名付けた空調設備機器を製造する新会社をスタートさせたのが始まりです。

彼らが拠点としたエミリア=ロマーニャは、モータースポーツの聖地ともいえる場所でした。そこで生まれ育ったタンブリーニは、元々の趣味であったモーターサイクルに深く傾倒し、やがて速く走ることに全ての情熱を注ぎ込んでいくことになります。

そんなタンブリーニのモーターサイクルにかける情熱、そして空調設備で培ったパイプ加工技術を原動力として、ビモータはフレームビルダーとしての活動を開始。彼らが作る剛性に優れ、軽く、低重心で、かつ美しい仕上げの手作り多鋼管トラスフレームは、カワサキ、スズキ、ホンダ、ヤマハといった、当時ハイパワーで鳴らした日本製エンジンと絶好の相性を見せました。

ビモータ製フレームを用いたマシンは、以降、数々の栄光譚をサーキットに刻みつけていくことになるのです。

はじめてカワサキ製エンジンを採用したビモータ、「KB1」(1978〜1982年)。Z900/1000用ユニットを搭載していた
Z500/550エンジンを積む「KB2」(1981〜1984年)
Z1000Jエンジン搭載の「KB3」(1983〜1984年)

ビモータを率いてきたのは、いつの時代も強烈な個性をもつ設計者たちでした。

タンブリーニ時代を経て、次に迎えたのが「DB1」や「YB4」など独創的なモデルを輩出したフェデリコ・マルティーニ。

フェデリコ・マルティーニ期にドゥカティの750F1エンジンを搭載して登場した「DB1」(1985〜1986年)

そして、そのバトンはピエルルイジ・マルコーニへとつながれていくことになります。そう、世界中に衝撃を与えた「TESI」の発案者です。

1990年に発表された「TESI 1D」は革新的なハブセンターステアリングシステムを採用。さらにエンジンを中心にしてスイングアームを前後に伸ばすなど、斬新かつ強烈なアイデアを積極的に採り入れた構造で、多くのモーターサイクルファンの間にセンセーションを巻き起こしました。

その後もビモータ最大のヒット作といわれる「SB6」をはじめ、DBやYBシリーズといった従来型の進化形などを精力的に開発します。

その後、二度の休眠期間を経るなど紆余曲折の時代をたどりますが、2019年、ついにビモータは帰ってきました。しかも、世界最高のパフォーマンスをもつカワサキ製エンジンを積んだマシンを携えて。

ビモータの新しい物語が、再び幕を開けたのです。

リミニのファクトリーで1台1台をハンドメイド

2019年11月、ミラノ国際モーターサイクルショーで「TESI H2」が発表されました。ビモータを象徴するハブセンターステアリングテクノロジーを採用し、カワサキ「Ninja H2」に搭載される高性能スーパーチャージドエンジンを搭載。イタリア・リミニのファクトリーで250台のみをハンドメイドするという、まさしくモーターサイクル界のスーパーカーともいえるモデルは多くの反響を集めました。

カワサキモータース MC ディビジョン サブディビジョン長の衣畑 昌範氏は、新生ビモータ開発のキーパーソン。「TESI H2」プロジェクトにもスタートから関わり、マルコーニ氏と侃々諤々議論を交わしながら、プロジェクトを推進してきました。

衣畑氏

「ビモータというのは、究極のモーターサイクルを世に出すことを目指しているブランドです。エンジンだけでも、設計をして、かつ高いレベルの性能と品質を満たすには相当な開発リソースが必要です。ビモータは決して規模が大きくないので、その時マーケットに存在する最高のパフォーマンスをもったエンジンを、自分たちのシャシーに組み合わせて、世界一のモーターサイクルを作ってきました。それが彼らのコンセプトなのです」。

自分たちが作る世界最高のシャシーに、世界最高のエンジンを積む。ビモータのそのシンプルなコンセプトは、黎明期から現在まで変わらず受け継がれています。

新生ビモータ第1弾のマシンを構成するのは、「『TESI』のシャシー」+「世界最強の『Ninja H2』用過給ユニット」。さらに、第2弾である「KB1」からの系譜を継ぐ「KB4」は、「ショートホイールベースおよび理想的な前後重量配分を実現した先進のシャシー」+「カワサキ伝統の並列4気筒ユニット」を採用しています。

新生ビモータのマシンは、「TESI H2」、「KB4」のいずれもイタリア・リミニのファクトリーでハンドメイドされます。こだわりの結晶である各部品を一流の職人がひとつずつ組み上げていく工程は、まるで工芸品を作り上げる過程のよう。カワサキモータース マーケティング部の川杉 貴弘氏も、その美しさは「別格です」と語っています。

川杉氏

「他ブランドのモーターサイクルと一緒に並んでいたとしても、ビモータはとにかく目を引くんです。遠くからでも特別感があるし、細かい部分をじっくり観察しても一切の妥協がない。イタリアの宝石といわれる意味が分かります」。

Bimota handmade painting

イタリア・リミニの工場で手作りされるビモータ。そのマシンには、設計者と職人たちの想いが製品の1台1台、部品のひとつひとつに込められています。

より多くの方々に“ビモータ体験”を

新生ビモータをカワサキが支援することで、今後はどのような広がりがあるのでしょうか。

衣畑氏

「我々カワサキはグローバルの販売ネットワークをもっています。販売チャネルが整っていないビモータは、これまで一部のユーザーにしか届けることができませんでした。でも、これからは世界中の人々にビモータを体験してもらうことができるようになると思っています」。

もう1つ、ユーザーにとってうれしいのがサービス面の充実だといいます。

衣畑氏

「いま、カワサキのディーラーでもビモータのサービスを受け入れることができるように、世界中の販売会社と準備を進めているところです。また、ビモータではイタリア本国で手配する部品が多くありますので、これまでは注文から到着まで数か月なんていうこともありました。そういう不便がなくなるように、カワサキモータース ヨーロッパ協力の下、イタリア製パーツの供給サポートも行えるようにしたいと考えています」。

新生ビモータがカワサキとタッグを組むことの強みについて、ピエルルイジ・マルコーニ氏はこう語っています。

マルコーニ氏

「カワサキの“ペトロールヘッド(熱狂的なバイク愛好家)”なスタッフたちと我々ビモータは、同じ情熱を共有しています。バイクにワクワクさせられる感覚を互いに理解しあえるのなら、きっと素晴らしい感動をお客さまにもたらす新しいモデルを作り上げていくことができるでしょう」。

ビモータのモーターサイクルは、イタリアンクラフトマンシップの結晶です。その稀少なブランドをなんとかこれからの時代にも残したい――カワサキモータースはそんな想いの下、その価値を安定的に提供し、かつビジネス規模を拡大するサポートをしていきます。

また、新生ビモータとのタッグは、カワサキモータースにとっても部品供給や販売網共有を通じて収益への貢献が見込まれる重要な機会となっています。

ビモータとカワサキ。このパートナーシップは両ブランドにとって新しい成長をもたらす一歩なのです。

アドリア海に面した、小さく美しいリミニの街で生まれ育ったマルコーニ。1970年代、彼が子供の頃に通っていた学校の教室の階下にあったのが古いビモータのファクトリーでした。授業中に聞こえてくるモーターサイクルの音に心を奮わせ、窓の向こうに煌めくビモータに目を輝かせていたかつての少年は、20世紀にビモータの一時代を築き、再び21世紀においても新しいビモータの歴史を作ろうとしています。

ところで、現在の新生ビモータのファクトリーには、マルコーニがビモータで最初に描いた「TESI」の設計図が飾られています。彼がビモータに入って最初に設計した作品「TESI 1D」の発表から遡ること8年前、1982年の時点でマルコーニが描き上げたそのコンセプト案に描かれているのは、なんとカワサキ製の550ccエンジン。

ビモータとマルコーニ、そしてカワサキは、いつか必ず出会うべき運命の絆で結ばれていたのかもしれません。

1982年にピエルルイジ・マルコーニ氏が描いた「TESI」の初期コンセプト案には、「KB2」に搭載していたカワサキ製550ccエンジンが描かれている

カワサキモータースジャパンはビモータの日本総輸入元として「KB4」の取り扱いをスタート。ご購入に関する詳細はカワサキモータースジャパンのビモータサイトからご確認ください。

パフォーマンスの頂点を追求するカワサキ製エンジンと、イタリアンクラフトマンシップの真髄を極めるビモータのシャシー。その2つの要素が融合することで、比類なきモーターサイクルが誕生しました。

今後はニューモデルの展開はもちろんのこと、より多くの方々に安心してビモータという「イタリアの至宝」を体感していただくことができるよう、販売チャネルやサービス体制を共有するなど、カワサキとビモータは互いに協力しあいながら一歩ずつ前進していきます。

カワサキモータース
MCディビジョン サブディビジョン長
衣畑 昌範
カワサキモータース
営業本部 マーケティング部
マーケティング課 主事
川杉 貴弘
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