宇宙へ導く鍵は、技術力だけではなく、打上げに対する信念

公開日2017.02.28

日本の宇宙開発において人工衛星打ち上げの中心的な役割を果たしている、種子島宇宙センター。打ち上げに携わる川崎重工の2人のエンジニアに、ロケットを宇宙へ導く鍵について聞きました。

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川崎重工業株式会社
プラント・環境カンパニー
低温貯槽プラント総括部
低温貯槽プラント部 設計二課
種子島現地事務所 所長
宮本 明男
PROFILE

1986年入社。水素貯蔵合金を開発する部署に配属された後、航空機及び船舶の旅客搭乗橋や航空機整備用ドックの設計を担当。その後、JAXA(当時NASDA)へ出向となり、筑波宇宙センターにて設備整備などに携わった後、種子島現地事務所所長として打上げ運用やメンテナンス業務に携わっています。

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川崎重工業株式会社
プラント・環境カンパニー
低温貯槽プラント総括部
低温貯槽プラント部 設計二課
種子島現地事務所 副所長
杉本 潤一
PROFILE

1990年入社。機器装置設計部(現 低温貯槽プラント部)に配属になり、球形貯槽、LPG平底貯槽の設計を担当後、JAXA(当時NASDA)へ出向し、H-ⅡA射点設備の開発を担当。2012年度から副所長として打上げ運用やメンテナンス業務に従事しています。

「打上げを必ず成功させる」という強い信念

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宮本所長

JAXA、三菱重工業、IHIエアロスペース、三菱電機…。その他、運用面で協力してくださる地元企業や燃料を運送してくれる会社など、関連する企業は数えきれません。どの会社も重要なミッションを遂行しており、どれ一つ欠けてもロケットは打ち上がりません。もちろん、どの企業も技術が買われて、この種子島宇宙センターのプロジェクトに参画しているわけですが、そこには、技術だけでなく「打上げを必ず成功させる」という強い信念が各社から感じられます。

しかし、何かトラブルが発生した際は、最適な処置はなにか、復旧までにどのくらい日数がかかるのか、それによってスケジュールはどう変化するのか等を、打ち上げ作業全体取りまとめ役の三菱重工業さんを中心に迅速に決めていかなければなりません。そこで鍵を握るのが「結束力」。強い信念を持つ者同士がお互いを認め合い、支え合う。この協力体制なくして、プロジェクトは決して成功しないのです。

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杉本副所長

種子島宇宙センターのプロジェクトで難しいポイントは「設備が稼働するのは打ち上げ前後のみ」という点です。

常時稼働している設備であれば、不具合をタイムリーに発見でき、それに合わせて対処法のマニュアルも更新されます。ここの設備は数か月に一度のペースでしか稼働しないため、打上げの約一か月前から入念にチェックを行います。それでも、突然不具合が発生することが多々あります。また、すべての設備を同時にチェックできるわけではないため、緊急復旧が必要になるケースも出てきます。

そのような事態が発生した際は、即座に三菱重工業さんに伝え、全体作業の中での影響を踏まえ、打上げスケジュールへの反映がなされます。

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宮本所長

打上げに影響を与える緊急事態が起きたときは、もう助け合うほかないのです。関連企業すべてに状況を通知し、スケジュールに反映する。もちろん逆のパターンもあります。他企業が担当する設備でトラブルが発生し、我々の作業をストップせざるをえないケースもあります。しかし、そこに文句を言ってはいられません。彼らの仕事が成り立たなければ、打上げ成功は達成できないのですから。

大崎射点設備の解体の「さよなら会」

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杉本副所長

先ほど少し話に上がりましたが、この種子島宇宙センターの初期段階からあった大崎射点設備。すでに現役を引退し、2013年に解体も行われました。

実はその時、JAXA主催の「さよなら会」があり、JAXAの現役メンバーはもちろん、OBの方や大崎射点設備の設計・運用に携わった弊社メンバーも招集されました。そのとき非常に嬉しく感じたのが、当時設計・運用を担当していた弊社メンバーの名前を、他の企業担当者の方がしっかりと覚えていてくださったことです。

中には定年を迎えて川崎重工業を退職しているメンバーもいたのですが、彼らの名前をしっかりと記憶していてくださり「お久しぶりですね」や「え!〇〇さん来れないのですか?残念です。」なんて言葉も飛び交っていました。

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宮本所長

私もとても感動しましたね。種子島宇宙センターを支えているのは、磨き上げられた技術や最先端テクノロジーだけではなく、やはり「人」なのだと確信した出来事です。

正直、ここでは大変なことも多いです。企業の垣根を越えて作業を行うには、それ相応のプレッシャーもあります。しかし、打ち上げ作業に携わるすべての関係者が、その根底ではお互いに尊重し合っていると実感できます。一つのメーカー、一人の人間だけでは決して成り立たないプロジェクトなのだと皆が理解しているからだと思います。

45年前に結ばれた絆は、年々強く、太くなりました。この関係性を崩すことなく、これからも皆でプロジェクトを遂行していきたいと思っています。

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