川崎重工が取り組むダイバーシティ&インクルージョン。 取組みの開始から10年を経て、現在地は?

公開日2023.11.30

企業、働く人ともに注目するトピックである、「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」。同じ基本的な考え方に基づいていても、施策やその背景にある想いは企業によってさまざまです。本記事では重工メーカーだからこそ立ち向かった課題や実施してきた取組みを、ダイバーシティ推進課のメンバーを中心に聞いていきます。

ダイバーシティ&インクルージョンの意味

組織や集団の中でさまざまな個性が尊重され、それぞれの力を活かす考え方を「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」と呼びます。

重要なのは、ただ「多様性」を掲げてさまざまな人財を集めるだけでは終わらず、多様な人財がそれぞれの能力を十分に発揮できる制度や仕組みの整備、文化の醸成などを行うことです。誰もが働きやすい職場環境は、一人一人の仕事へのモチベーションや生産性につながるほか、企業が進化を遂げつづけるエンジンにもなります。

男性社員比率が高い川崎重工は、一般的にはD&Iから遠い存在に見られてきました。そんな中でも、2010年度にダイバーシティ推進課を立ち上げ、変化を起こすことに挑戦しつづけています。

さまざまな枠を超えてつながることで、成長する

川崎重工の中でD&Iに取り組む部署、ダイバーシティ推進課の立ち上がり当初のメインテーマは女性活躍推進だったと、秦さんは言います。

秦 写真.JPG

女性の活躍を推進するために、とくに仕事と育児を両立させながら働く人に向け、必要な制度や仕組みの整備、研修などを実施しました。最初は女性活躍をテーマとしていましたが、取り組むうちに新たな課題やターゲットに気づきました。

加えて、川崎重工は男女比が9:1と男性社員比率が高いですが、男性社員の中にもさまざまな個性や価値観があり、多様性に富んでいます。一人一人が能力を発揮するためにも、現在は以下のテーマに対しても積極的なD&Iの取組みを行っています。

1)「女性活躍推進」
2)「仕事と育児・介護・治療の両立支援」
3)「障害者や高齢者の雇用促進」
4)「セクシャルマイノリティへ向けた制度・環境整備」
5)「外国籍社員」

D&Iは川崎重工がグループビジョン2030で掲げる「クロスオーバー」と通じる点でも非常に重要であると、秦さんは強調します。

秦 写真.JPG

私たちはグループビジョン2030を構成するキーワードのひとつとして、「クロスオーバー」を掲げています。目指すのは、「社会に、そして次の時代に、“信頼のこたえ”を提供する存在」です。そのためには、社会課題に焦点を合わせ、グループ内の縦割りの風土を変えて、属性や個性、専門分野や能力の枠を超えて新たな挑戦をしなければいけません。まさに、D&Iと共通する考え方です。

川崎重工の挑戦① 男性のみならず女性の働きやすさにもつながる、男性育児参画促進

川崎重工におけるD&Iの具体施策の中でも、代表的な3つを取り上げます。

最初に、男性の育児参画促進です。男性社員の働きやすさや、人生の充実度向上のためはもちろん、仕事と育児を両立する女性社員の働きやすさにもつながると考えています。男性社員の育児参画が進めば、同じく子どもがいる女性社員への理解が深まります。

男性の育児参画を考えるセミナー

外部講師を招いてのセミナーを継続的に実施するほか、ベビーシッター費用補助など制度の拡充にも努めています。現在グループでの男性育休の平均取得日数は、71日。全国平均の2倍近くです。

川崎重工の男性育休の取り組みについて、セミナー講師を勤めていただいている前之園めぐみさまにお話を伺いました。

もっと安心して制度を利用できる職場になるには、「チームで成果を出す仕組みづくり」が必要

川崎重工の育休支援制度を拝見して、仕事をする(復職する)ことを支援する「保活コンシェルジュ」と「川重子育てレスキュー制度」は特徴的だと感じます。「保活コンシェルジュ」は、特に第一子の場合は子育てが初めての経験で、精神的にも身体的にも余裕がない時に専門スタッフが相談に乗ってくれるのはとてもありがたいことです。「川重子育てレスキュー制度」があることで、ベビーシッター利用のハードルを下げ、夫婦で抱えず、困った時には民間サービスにも頼るきっかけになることが期待できます。加えて、川崎重工では女性・男性ともに育休取得に対して理解があり、協力的であったとおっしゃる方が多い印象です。また、管理職からも、女性に限らず男性も育休を取得するべきといったポジティブな声も多く聞かれました。

一方で、制度があり職場の理解があったとしても、業務の多忙さや属人化などから、職場に迷惑はかけられないとあきらめる方も少なくありません。その観点で組織運営に悩みを持つ管理職の方も非常に多いです。働き方そのものを見直し、全ての人が限られた時間で成果を生み出す働き方にシフトすること、欠員があってもチームで成果を出せる仕組みがあることで、充実した制度を、必要な人が必要な時に安心して利用できるようになると思います。

※保活:保育園に子どもを入れるための活動のこと。情報収集や保育園の見学、申込み準備など。

※保活コンシェルジュ:育休者に対し、保育園入園を支援するサービス。

※川重子育てレスキュー制度:病児・病後児対応、出張・残業対応で、会社が定めた保育事業者のベビーシッターサービスを利用した場合、費用補助を行う制度。

男性育児参画支援施策に関する社内の声

育休を取得した男性社員の声

「休業前・復帰前・復帰後、引き継ぎや働き方についての面談が役に立ち、復帰後のギャップもありませんでした。育休取得者が増えている一方、取得しやすさは部門によると聞くこともあります。公平に制度を利用できるようになるといいですね。」

男性社員の多い部門で働く女性社員の声

「育児・介護のための短時間勤務の許可やコアタイムの廃止、積立休暇の時間単位取得など制度が見直されました。男性も育児理由の休暇やリモートワークに抵抗がなく、組織全体でプライベートを尊重する風土があります。」

川崎重工の挑戦② ALLY(支援者)を増やすことがLGBT施策のカギ

次に、近年力を入れている施策はLGBTを含むセクシャルマイノリティに関するものです。施策は、大きく2つ。LGBT当事者の社員に向けた支援と、当事者を含む全社員に向けた活動です。

当事者に向けては、具体的に利用できる制度を整備。同性パートナー登録制度やビジネスネーム制度を導入しています。

全社員に向けては、LGBTハンドブックやセミナーを通して、セクシャルマイノリティに関する基本的な知識を身につけてもらうようにしています。

また知ってもらうだけではなく、正しい理解を持ち、支援できることを表明する「Kawasaki LGBT ALLYマーク」を制定し、賛同者にALLYグッズを配布する取組みも行なっています。ALLY(アライ)は英語のAlly「味方」が語源。セクシャルマイノリティに関する基本的知識を学んだ社員が自らをALLYとして社内へ表明できます。

現在、賛同者は約1,100名まで増えており、ALLYの存在の見える化が職場環境の改善やLGBT当事者への安心につながります。

また社外向けにも、「レインボーパレード(東京・大阪)」への参加や、今年は当社がスポンサーを務める「ヴィッセル神戸」の試合や「カワサキワールド」へ来場された方に対して、LGBT ALLYマークや当社の取り組みを紹介する特製うちわ約15,000本を配布するイベントなどを行ない、積極的に発信しています。

これらの結果として、川崎重工はLGBTなどのセクシュアルマイノリティに関する取り組みの評価指標「PRIDE指標」において、最高評価であるGOLDを6年連続で取得しました。

社員(ALLY)の声

LGBTへの社内理解が進んだと感じた場面

「LGBTに関する理解促進は広がっており、現場の会話でも意識の高まりを感じます。例えば一部の女性社員の制服(スカート)着用は作業着へ変更となり、これもバイアス払拭の事例ではないでしょうか。」

LGBTへの理解ある風土をさらに醸成していくための川崎重工の伸び代だと感じる点

「生産現場を中心に、ALLYを増やしたい。今のALLY社員を巻き込みながら、グッズを多様化するのも効果的だと思います。ステッカーなどは現場で興味を集めるので、その度に説明を行うようにしています。」

川崎重工の挑戦③ ダイバーシティをより身近にする「多様性について考えるセミナー」

最後の事例は「多様性について考えるセミナー」という名前で2020年度から開催している自由参加のセミナーです。LGBTやアンコンシャスバイアス、障害者活躍、仕事と介護の両立など、その時々に異なるテーマを設定し、外部講師や当事者を招いて講義を行っています。

原則オンラインかつ定時後に実施しているため、終業後に自宅から参加することも可能です。参加者の満足度は高く、これからもダイバーシティに関するさまざまなテーマをより身近に感じられる機会をつくり、D&Iを浸透させていきます。

着実で小さな成果も、大きな動きに変えられる

様々な施策を通じ、D&Iに取り組んでいる川崎重工。秦さんによれば、社内の反応に着実な変化を感じているといいます。

秦 写真.JPG

ALLY制度やレインボーパレードへの参加者の増加をはじめ、全国平均の倍ある男性育休取得日数に加え、数字では見えない変化も。例えば、社員から「育休をとってよかった」「周りがとっていると自分もとりやすい」といった意見を聞けるようになりました。また育休取得者本人はもちろん、上司層の考え方も変わったとも聞きますね。

企業風土や文化を変えるには、長期的な視点で継続して取り組むことが大切。着実な取り組みが成果として現れる一方で、課題はまだあると秦さんは言います。

秦 写真.JPG

生産現場で働く社員に向けたダイバーシティに関する理解の浸透は大きなテーマです。重工メーカーの現場は男性比率が高いですが、最近では女性の配属や男性で育休を取る社員が増えてきており、さらなる理解浸透が不可欠となっています。

そういった中で、2023年度より生産現場に配属される新入社員に向けてダイバーシティ研修を実施しています。今後はその上司層に向けた研修も実施していく予定です。

男性社会の重工業界を変える

私たちの業界は、まだ男性比率の高い業界です。さらに、外国籍の方、障害者の方、ご家族の介護をする方などさまざまな方への取り組みを進化させる必要があります。その状況を変えようと取り組みつづけており、確実にD&Iが広がりつつあります。
これからも「つぎの社会へ、信頼のこたえ」を見出していくために、川崎重工は誰もがいきいきと活躍できる会社を目指していきます。

秦 写真.JPG
川崎重工業株式会社 人事本部 人事企画部 ダイバーシティ推進課
秦 凜太郎
前之園講師写真.jpg
公益財団法人21世紀職業財団客員講師 
DIIマネジメントサポート合同会社 代表
前之園めぐみ
この記事をシェアする

ニュースレター

ANSWERS から最新情報をお届けします。ぜひご登録ください。