ジャパンモビリティショー2023を体験! 浮かび上がるKawasakiの 「Synergy by Synergy」

公開日2023.12.25

一般社団法人日本自動車工業会が主催する国内最大のモビリティショー「ジャパンモビリティショー2023」が2023年10月28日から11月5日までの9日間、東京ビッグサイトで一般公開された。従来の「東京モーターショー」から装いを一新、「乗りたい未来を探しにいこう」をテーマとし4年振りに開催された。合計来場者数は111万人を記録し、相当な盛況ぶりであった。川崎重工グループからは従来のカワサキモータースブースに加え、水素エンジンやVTOL無人機「K-RACER」などを主催者企画展「Tokyo Future Tour」へ出展。そこから浮かび上がってくるのは、シナジー効果の高い革新的な技術が、さらなるシナジーを創出する、いわば「Synergy by Synergy」とも言える川崎重工の技術風土だ。

ショーのテーマは「モーター」から「モビリティ」へ

「伝統と革新」を具現したカワサキモータースブース

 カワサキモータースブースのテーマは「伝統と革新」。これまでのモーターサイクルの流れと未来への道筋を見せた。

 1953年にスタートしたカワサキのモーターサイクル事業は今年、70周年の節目を迎えた。また目黒製作所※1の創立まで遡ると、来年には100周年を迎える。さらに「Ninja」ブランドは誕生から40周年を迎える。

 これを受け、「メグロ」ブランドの伝統と信頼を受け継ぐ230ccのシングルスポーツモデル「MEGURO S1」とカワサキWシリーズ「W230」を、そしてNinja ZX-10RとZX-4RRにかつてのZXRカラーリング&グラフィックをリバイバルした「40th Anniversary Edition」を、また卓越したオフロード走行性能を誇る「KLX230」をワールドプレミア(世界初)として参考出品した。

ブースの中央には、北米で活躍するオフロード四輪車「TERYX KRX4 1000」を展示、来場者からの注目を集めていた。

一方、「革新」のモデルとして、高い環境性能とカワサキらしい Fun to Rideを実現する世界初※2のストロングハイブリッド※3モーターサイクル「Ninja 7 Hybrid」と、電動モーターサイクル「Ninja e-1」を市販予定車としてジャパンプレミア展示。カーボンニュートラル時代の新たなモーターサイクルの姿を具現化した両モデルは、ひときわ注目を集めていた。

※1 : 1924年に創業し日本初のスポーツバイクブランド「メグロ」を生み出した目黒製作所。1964年に川崎航空機工業(現在の川崎重工)により統合された後、その伝統は「W」シリーズに継承され、「ビッグバイクのカワサキ」というイメージの礎になった。

※2 : 主要メーカーの量産モーターサイクルとして世界初(スクーターを除く)、2023年10月6日現在。カワサキモータース調べ

※3 : ストロングハイブリッドシステムは、エンジンと電気モーターを組み合わせることによりパワフルな走行を実現し、また電気モーターのみでも走行可能なシステムです。

カワサキモータースの展示ブース。ライムグリーンへの関心は高く、今回は、「Ninja」誕生40周年を記念して「Ninja ZX-10R」や「Ninja ZX-4RR」に、「ZXR」のカラーリングを施したモデルが参考出品された。
ストロングハイブリッドモーターサイクル「Ninja 7 Hybrid」と電動モーターサイクル「Ninja e-1」は、多くの来場者の注目を浴びた。

また、今回は「Tokyo Future Tour」をはじめとするさまざまな主催者プログラムが用意され、未来のモビリティの姿をテーマとした展示がおこなわれた。川崎重工グループは、次世代モビリティが拓く世界を表現したLife&Mobilityと災害などに対応するモビリティが集うEmergency&Mobility領域で5つの製品を出展、多くの来場者の関心を集めた。

水素燃料エンジンで、カーボンニュートラル時代の新たな選択肢を切り開く

「カーボンニュートラル時代のモビリティの動力源とは?」と問われれば、おそらく大半の人が、「電気モーター」と答えるだろう。しかし世界の国々はそれぞれのエネルギー事情を抱えており、多様な選択肢を準備することこそが真に効率的なカーボンニュートラルへの近道であるという考えが常識となりつつある。水素を燃料とする内燃機関(エンジン)も、重要な選択肢のひとつだ。

今回カワサキモータースが展示したのは、フラッグシップモデルNinja H2に搭載する998ccのスーパーチャージドエンジンをベースとする、水素を燃料としたエンジンだ。

今年5月、スズキ、ホンダ、ヤマハそしてカワサキの4社が主体となって技術研究組合「水素小型モビリティ・エンジン研究組合(HySE)」を設立した。走行時の主な排出物が“水”であるモビリティが実用化されれば、新たな選択肢を世界へ提供できることになる。また日本のお家芸ともいえる内燃機関が継承されることの効果は計り知れない。

このエンジンを搭載したバギー車が、東館モータースポーツエリアにHySEが出展した「HySE-X1」だ。来年1月にサウジアラビアで開催される「ダカール2024」(ダカールラリー)の新カテゴリー「Mission1000」に参加、敢えて世界一過酷なモータースポーツと言われるラリーへチャレンジすることで、水素エンジンの基盤技術構築を加速させ、グローバルな仲間づくりに向けたアピールを進める予定だ。

Ninja H2用スーパーチャージドエンジンをベースにした水素エンジン。カーボンニュートラル時代の新たな内燃機関を示すモデルだ。

水素を「はこぶ」「ためる」を担う大型液化水素運搬船のタンク内部をVR経験

 川崎重工が独自に開発した大型液化水素運搬船のモックモデルも公開された。

 大型液化水素運搬船は、水素をマイナス253℃に冷却して体積を800分の1にした液化水素を4つのタンクに搭載し、合計16万㎥の液化水素の運搬を可能にする。液化天然ガス(LNG)でも液化水素でも輸送中には外部からの侵入熱によりボイル・オフ・ガス(BOG)が発生するが、大型液化水素運搬船はBOGを回収して船のエンジン燃料として活用する仕組みも取り入れられる。

 LNGの液化では、天然ガスをマイナス162℃で冷却し保存する。川崎重工はLNG輸送船のためのタンク開発などで培った断熱・冷却構造を、液化水素用としてさらに深化させる。水素の方がさらに約90℃も冷却温度が低い。大型液化水素運搬船はすでに基本設計を終え、詳細設計の段階に入っているが、一つ当たり4万㎥という大容量タンクの技術革新をめざした取り組みが続いている。

 モビリティショーでは、冷却タンク内に入って大きさや深さを実感できるVRが用意されたが、最頂部から底部までの高さが約40mという大きさに、思わず声を上げる人が絶えなかった。

大型液化水素運搬船のモックモデル。手前でVRゴーグルを付けている来場者は、大型液化水素運搬の内部を見学できるVRツアーを体験中だ。

優れた産業技術が災害対応を変える

災害現場での活躍が期待されるオフロード四輪車「MULE」

「MULE」は、主に北米市場で活躍するカワサキモータースのオフロード4輪車で、仕事も遊びもこなすタフな相棒として、さまざまなシチュエーションで活用されている。昨年から国内での販売も開始し、徐々に注目を浴び始めているモビリティだ。

 そのオフロードでの走破性の高さを見込み、川崎重工グループが研究を進めているのがMULEの無人自律走行だ。今回の展示コンセプトのように、災害現場で無人で活躍できれば、その効果は非常に大きいと期待されている。一方、舗装された道をGPSに導かれながら走るのとは異なり、悪路での自律走行はさまざまな課題があり、そのハードルは高い。目下、遠隔操縦などの可能性も含め、実証研究を進めている最中だ。

オフロード多目的四輪車「MULE」。これをベースとして災害時に活躍が期待される自律運転研究に挑んでいる。

山岳地帯における無人物流の可能性を探る「K-RACER」

川崎重工が新しい無人物流システムの一つとして展示したVTOL無人機「K-RACER」は、企画の趣旨を体現するものだろう。

 「2024年問題」と言われるほど物流における労働力不足は大きな社会課題になっている。これに対し川崎重工は、「ロボティクス×モビリティ×航空」という技術の組み合わせにより「VTOL無人機による物資輸送プラットフォームの構築」をめざしている。その一翼を担うのが「K-RACER」だ。

 モビリティショーに展示されたのは初代の実証機である「K-RACER-X1」。ローター径が5m、全高が1.9mで、無人地帯での目視外飛行を想定している。「X1」の積載重量は100㎏。いわゆるドローンのようなマルチコプター型ではなくヘリコプター型なのは、後者の方が高い飛行地帯でも運航しやすいためだ。

 「K-RACER」はすでに2代目の実証機である「X2」が投入され、長野県伊那市とのプロジェクトが進んでいる。「X2」は「X1」よりも一回り大きく、ローター径が7mで最大で200kg(標高0m)、標高3,100mならば100kgの荷を搭載して1時間以上飛行できる。 

 「K-RACER」は、2026年度に市場投入される計画だが、主に山小屋への物資輸送や高圧電線の保守部品の輸送など山岳地帯での運用を見込んでいる。無人機なので山岳地帯を有人ヘリで飛ぶリスクを低減でき、既定ルートを飛ぶので天候に左右されにくい。将来的には物資の積み込みから輸送、帰還までを無人でシームレスに行えるようなプラットフォーム技術の構築も検討されている。

主宰者プログラムの一つ「Tokyo Future Tour」の「災害対応関連技術」で展示された「K-RACER-X1」(上)。このテーマ展示では、東京が大災害に襲われた時を想定して各種の技術が活躍するシーンを寸劇で紹介する催しも用意された(下)。

ヒューマノイドが被災者を抱きかかえて運び、安全を確保する

 二足歩行の人型(ヒューマノイド)ロボット「Kaleido」は、災害現場での瓦礫の処理や高所作業など危険を伴う現場での活躍を目指して開発が続いている。

 日本で初めて産業用ロボットを実用化した川崎重工は、産業用ロボットの「安定した頑丈さ」を極め、その「安定と頑丈さをヒューマノイドでも実現できないか」と研究を始めた。コンセプトは「転んでも壊れないタフなヒューマノイド」である。

 Kaleidoは、身長178㎝、体重85㎏。ベンチプレスで60㎏まで持ち上げられ、バッテリー内蔵、ビジョンセンサーで対象物を認識し、脚や腕に32自由度の関節を持って掴む、運ぶという人間の基本動作を確実に行う。

 ヒューマノイドロボットの自由度関節を動かす電動アクチュエーターには、起き上がるときには低速で高推力、歩行するときには低推力で高速動作という具合に、小型軽量で高速低推力と低速高推力が両立され、信頼性が高く、衝撃耐性も強いなどの技術要件がある。アクチュエーターの基本はシリンダーであり、川崎重工では建設機械向けのシリンダー技術を出発点に産業ロボットなどで技術を磨いてきた。これがKaleidoにも生かされているのである。

ヒューマノイドロボット「Kaleido」は災害救助や危険な現場などでの活躍が期待されている。写真では。倒れて床を傷つけないようにロープで吊られているが、自立二足歩行で動く。来場者も興味津々だ。

革新的な技術をそこにとどめず、進化・深化させる川崎重工のエコシステム

 社会課題の解決に貢献する技術革新がどのように誕生したり、創造されたりするかはケース・バイ・ケースである。しかしゼロから姿を現すような画期的な“創成物語”は少なく、むしろ今、手元にある技術の進化と深化をさぐる取り組みから予期せぬ新しい技術が姿を見せることが多い。

 今回、ジャパンモビリティショーに展示された川崎重工グループの各種の技術開発を見ると、そこには多くの共通点、大きな幹から派生してきたDNAを同じくする技術群であることが分かる。例えば、カワサキモータースによって2014年に「Ninja H2」シリーズ向けに開発されたスーパーチャージドエンジンは、「K-RACER」の試作機や水素エンジンの開発プロジェクトなど多方面で活用の拡大研究がなされている。

 一つの要素技術として革新的である技術は、それを進化・深化させようという技術者たちの手によって要素技術にとどまらない可能性を示す。また各種の要素技術が組み合わされることで強力な相乗効果(シナジー)を創造することもめずらしくない。

 ジャパンモビリティショーの限られた展示を見るだけでも、川崎重工の技術シナジーは、個々の技術によるシナジーの創造にとどまらず、用途拡大やさらなる技術進化を通して「シナジーによって新たなシナジーが創造されるSynergy by Synergy」という力強さを備えていることが分かる。それは、川崎重工のエコシステムと言っても良いだろう。

 つまり未来への贈り物が着実に形を見せ始めているということなのである。

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