おもちゃとヘリコプター、多くの人から求められ続けるものを。 タカラトミー×川崎重工 開発者特別対談

公開日2022.07.29

株式会社タカラトミーが発売し、親子3世代にわたるロングセラーブランドとして親しまれているダイキャスト製ミニカー「トミカ」では、新たなWebアニメと玩具シリーズ『トミカヒーローズ ジョブレイバー 特装合体ロボ』を2022年4月から展開しています。このシリーズでモチーフとなっているのは、働く乗り物。そこに川崎重工のヘリコプター「BK117 D-3」も加わりました。今回のコラボレーションにあたり、ジョブレイバーの企画開発者である高城 雄太氏とBK117 D-3の設計開発者である村橋拓哉氏に、それぞれのものづくりに対する想いやおもしろさについてお聞きしました。

※マスク着用や一定距離の確保など、感染対策を徹底し、対談・撮影を実施しています

株式会社タカラトミー
ブランドビジネス本部 ブランドビジネス事業室 トミカ事業部 企画開発課 主任
高城 雄太
PROFILE

小さい頃から絵を描いて人に見せることが大好きで、その頃の想いのまま、おもちゃ業界へ就職。2015年タカラトミー新卒入社。入社後はマーケティングを経験したのち、企画開発業務へ。

川崎重工業株式会社
航空宇宙システムカンパニー ヘリコプタプロジェクト本部
ヘリコプタ設計部
ヘリコプタ設計三課 主事
村橋 拓哉
PROFILE

大学卒業後、生産設備の設計会社に入社。川崎重工へ転職しヘリコプタ設計部に所属、BK117シリーズ駆動系統の設計開発を行っている。

「働く乗り物」でつながった、ふたりの開発者

最初にそれぞれ、自己紹介をお願いします

高城

タカラトミーへは2015年に新卒入社し、現在はトミカ事業部で商品の企画開発を担当しています。就職活動の際、おもちゃ業界は第一志望でした。子供の頃から絵を描いては人に見てもらうのが好きで、そういった原体験もあり、誰かが喜んでくれるものづくりを仕事にしたいと考えていたのかもしれません。

村橋

私は、10年ほど前に川崎重工へ中途入社しました。以前は他の会社で工場の生産設備の設計をしていたのですが、当時は自分が設計した設備を直接見ることはなく、ものづくりの実感が持てませんでした。ものづくりの現場のある会社で仕事がしたい。そういった考えで転職し、現在はBK117シリーズの維持設計や開発業務を担当しています。

今回は、ジョブレイバーの新たな仲間として川崎重工のヘリコプターBK117 D-3が登場し、商品化されたということで実現した対談です。ジョブレイバーについて、高城さんからご紹介ください。

高城

はい。ジョブレイバー※1は「働く乗り物」をモチーフにしています。単に働く乗り物の見た目をしているというだけでなく、「ジョブロイド」というお仕事ロボットと共に変形合体することで「ジョブレイバー」に変身。ロボットと乗り物が一緒になり、そのベースとなる乗り物の特徴や能力に応じて活躍するという設定です。商品でもそのように、乗り物とロボット型の人形を変形合体して遊ぶことができます。

村橋

さまざまな働く乗り物とジョブロイドが登場するWebアニメ『トミカヒーローズ 特装合体ロボ ジョブレイバー』も配信していますよね。これまでに警察車両や消防車などが活躍していますが、川崎重工のBK117 D-3も登場※2すると聞いて、驚きました。BK117 D-3はさまざまな用途のあるヘリコプターですが、ジョブレイバーのおもちゃとしては、ドクターヘリと消防ヘリの2種類の商品がありますね。

高城

そうなんです。今回のアニメでは、人命救助に関わる救急医療のドクターヘリと災害時の消防ヘリとして活躍します。ドクターヘリと消防ヘリ、活躍の仕方が大きく異なる2体のジョブレイバーですから、それぞれを操縦するジョブロイドも細かに性格の設定を考え、細部にこだわるおもしろさがありました。

おもちゃ開発は、こだわり詰め放題

村橋さんは設計担当者として、ジョブレイバーになったBK117 D-3をご覧になって、いかがでしたか?

村橋

出来上がったものを社内で見た時、最初からみんなが「おお、BK117 D-3だ!」と喜んでいたのが印象的でしたね。本当に、BK117 D-3の特徴を持ってそのままロボットになってくれた。

高城

できるだけ本物のカタチに忠実にしようとこだわりました。特に苦労したのは、尾翼付近の、機体が細くなっているところですね。本来のBK117 D-3のフォルムよりも、ほんの少し太くしています。理由は、おもちゃとしての安全性を担保するためで、より折れにくく、壊れにくいようにしています。本物のBK117 D-3の再現性と安全性のバランスをとりながら考えています。

村橋

なるほど。そういったこだわりはおもちゃの企画開発ならではかもしれませんね。ほかにはどんなこだわりを持って、日々ものづくりをしていらっしゃるのですか?

高城

おもちゃの企画開発は、「こだわり詰め放題」なんです。もちろん先ほどBK117 D-3の例でお話ししたように、安全性は大切なのですが、そのうえでなら、やりたいことは全部やってしまえる。おもちゃ本体へのこだわりにとどまらず、例えば商品がお店で陳列されるときに見えるパッケージ正面のデザインや、目立ちづらいところにあるお客さまアンケートの二次元コードの装飾ひとつでも、一工夫するようにしています。

村橋

それはおもしろいですね!

高城

そのおもちゃを楽しむための遊びの核になるような大きなこだわりも、それひとつで売上が大きく変わるようなことではない、小さなこだわりも、なんとか入れられないか「やってみよう!」とチャレンジできる面白さがあるかもしれないですね。

納入した後も、「ものづくり」は続く

村橋さんにも、BK117 D-3に関するこだわりを聞いてみたいですね。

村橋

BK117 D-3は前身となるBK117 D-2を改良したものです。整備性や搭載重量などに関し、クライアントから要望のあった事項について、より良いものとしました。特に注目してほしいのは、「ブレード」と呼ばれるプロペラの部分。前モデルは4枚でしたが、ここを5枚にすることで振動の軽減に成功しています。BK117 D-3は、BK117 D-2まで取り付けられていたペンデュラムと呼ばれる制振装置なしで快適に飛ぶことができるんですよ。

高城

ブレードが増えると、振動が抑えられるのですね。

村橋

ええ。しかし多ければいいというわけでもないのが難しいところです。ヘリコプターの開発では、「最適化」をとても大事にします。まずは安全性を第一に、クライアントからのニーズやコストなどさまざまなことを考慮しながら何度もテストを繰り返し、ちょうどいいポイントを探していくのです。

高城

同じものづくりでも、おもちゃとヘリコプターの開発では異なるポイントかもしれないですね。

村橋

そうですね。航空機の製造に関わる人は誰もが同じ思いを持っているものですが、人の命を預かる乗り物の設計者として、航空安全の確保が常に最優先。だから自分自身の価値観やこだわりよりも、安全基準を重視して業務を行うことにこだわります。また、新たな製品や手法にチャレンジする前には、十分な安全性が確認できるかどうかを見極める慎重さも求められます。このように安全基準をクリアした技術を少しずつ着実に積み上げるようにして発展させていく姿勢が重要です。

高城

村橋さんも含めて、これまでのヘリコプター開発に携わってきた方々と共に、技術を積み上げていくような仕事なのですね。

村橋

そうですね。ちょっと不思議な話かもしれませんが、ヘリコプターの新モデルは、いったん開発が完了したらそれでおしまいではなく、お客さまへ納入した後でもより良い性能を求めて開発が続きます。

高城

どういうことですか?

村橋

もちろん、未完成品を納入するという意味ではなく、きちんと基準をクリアしたものが納入されます。しかし私たちは納入後も「もっと良くできないか?」という視点でヘリコプター開発を続けているのです。例えば、ヘリコプターに限らず航空機全般に言えることですが、安全性を保つために、はじめはパーツの使用時間を安全側に厳しく設定した運用基準に照らし合わせて制限し、更新しながら運用されています。パーツの使用時間は耐久テストで確認し設定していますが、機体が運用を開始してからもメーカーでは試験を継続し、使用時間を延ばすことがあるのです。航空機は運用されながら年月をかけ、お客さまが必要とするかたちに限りなく近づけるため、マニュアルや使用方法がアップデートされ続けます。納入後もものづくりが続いていくのは、醍醐味ですよね。

つくったものが、誰かに喜ばれている。ものづくりに、共通するやりがい

お二人がものづくりのお仕事に携わるなかで、感じるやりがいについて教えてください。

村橋

「ものづくりの実感を持ちたい」という想いが今の仕事につくきっかけでしたので、その実感が得られていると思います。あるいは、外を歩いているときにも、ヘリコプターの音が聞こえたら、パッと空を見上げてしまいますよね。そのとき、自分の携わっている機体のことを思うのです。「見上げた機体と同じく、自分の携わっているヘリコプターも活躍してくれるだろう。そのために私の仕事がある」と思うと、この仕事にやりがいを持つことができます。

高城

携わった製品が活躍している場を見るのはやはりうれしいものですね。私も、子供たちがおもちゃで遊び、喜んでくれる姿を見ることは何よりのやりがい。自身が製品に込めた想いが通じたような気持ちになります。

村橋

使ってもらう人や場面は違えども、作ったものの活躍がうれしいのは、ものづくりをする人に共通する想いなのかもしれません

高城

そうですね。ジョブレイバーに関して言えば、働く乗り物がモチーフですから、おもちゃ単体では成立しません。BK117 D-3という本物があって、それが街で、ニュースで、活躍する姿を目にすることがあるからこそ、子供が憧れるおもちゃになるのだと思います。これからも広く世の中で活躍するものを、川崎重工さんと村橋さんに、お願いしたいです!

村橋

本当にそうですね。トミカシリーズは、世代を超えて愛され続けているもの。その脈々と続く流れと同じように、これからの私たちもより良いものづくりを考えていきたいと思います。

この記事をシェアする