海の交通を支える電動油圧舵取機。世界トップシェアの挑戦の歴史

公開日2019.04.30

大型船の針路を変える舵を動かす電動油圧舵取機。この分野で累計搭載隻数2万隻、世界トップシェアという驚異的な信頼を勝ち得ているのが川崎重工です。一歩誤れば、事故や燃料漏れによる海洋汚染につながる大型船の操縦を、業界最高水準の耐久性と精度で支えています。それぞれの時代において、最新の技術で海の環境と安全を守り続けてきた、川崎重工の舵取機開発の歩みに迫ります。

漁業の近代化に貢献した、漁船向け「小型ヘルショウ式舵取機」

初期モデル

かつては蒸気圧を用いた汽動式が主流であった舵取機に技術革新をもたらしたのが電動油圧舵取機でした。川崎重工は1916年(大正5年)に英ジョン・ヘスティ社およびヘル・ショウ社と提携して「ヘルショウ式電動油圧舵取機」を導入。技術導入した初の国産電動油圧舵取機は貨物船「ふろりだ丸」に搭載された後、26年には巡洋艦「衣笠」に、さらに42年には空母「飛鷹」に搭載されました。

また、1924年にはヘルショウポンプの製造を開始。電動機で駆動するポンプは、油の吐出量と流れの方向を任意に変えることができる当時の代表的な油圧ポンプで、長く舵取機の油圧源として使われます。

川崎重工は戦後、漁船向けの小型ヘルショウ式舵取機を開発し、漁業の近代化にも貢献しました。

油圧の高圧化、回転数の高速化で大型タンカーの需要に応えた、「BV式舵取機」

1964年には、独ブルーニングハウス社と技術提携したアキシャルピストンポンプ「Bシリーズ」を組み込んだ大型電動油圧舵取機「BV式」の製造を開始。舵取機「FD-85P」がタンカー「天龍川丸」に搭載され、大型舵取機のヘルショウ式時代に別れを告げました。

ヘルショウポンプでは不可能だった油圧の高圧化、回転数の高速化で着実に成果を重ね、大幅なコストダウンを実現。舵取機に要求される「高信頼性」「高耐久性」「高精度」「舵板特性に合ったトルク特性」のすべてで磨きをかけていき、世界最大を更新するタンカーに相次いで採用されて技術基盤を強固にしていきます。

高圧、長寿命の独自開発モデル、「LV式舵取機」

電動油圧舵取機の肝はポンプであり、1987年には川崎重工が自社開発した斜軸型アキシャルピストンポンプ「Lシリーズ」を採用した大型電動油圧舵取機「LV式」の開発にこぎ着け、舶用機械分野にまた一つ技術革新をもたらしました。

高圧、長寿命のLシリーズの採用により舵取機の高圧化や耐久性は飛躍的に高まった他、連続制御方式の開発により優れた即答性と高い舵角精度を実現。これにより省エネ型のオートパイロットの性能を十分に引き出せるようになりました。

LV式にコンパクトさを兼ね備えた、「LV式20シリーズ」

LV式の信頼性はそのままに、さらなる競争力強化を図るために舵取機のアクチュエーターの設計を見直し、さらに高圧化、軽量・コンパクト化した新型舵取機が「LV式20シリーズ」です。ヘルショウ式の1号機から約100年で、単位重量当たりの出力密度は6倍にまでなっています。

2018年には商船三井と共に舵取機のセンシングとビッグデータ解析による省エネ運航、故障予知技術の共同開発にも着手しました。舵取機がインテリジェンス機能を持つ時代もまた、川崎重工がリードしていきます。

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