過去の研究も、他事業部の成果も、 全てを生かして新たな航空機を作る

公開日2022.12.22

カーボンニュートラル実現の大きな一歩として期待される水素航空機。そのエンジンの開発は手探りで始まりました。過去の研究や他部門の実績、そして社内外の仲間と共に、広い視野で新たなプロジェクトに挑む従業員の声を紹介します。(本記事は、川崎重工グループの未来を描く特設ページ「Kawasaki ViSiON MAP 2030」の一部です。)

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航空宇宙システムカンパニー
航空エンジンディビジョン エンジン技術総括部
エンジン技術開発部 エンジン熱技術課
都留 智子
PROFILE

2000年入社。学生時代は航空宇宙工学を専攻し、大きなものづくりに憧れて川崎重工へ。航空エンジンの開発や産業用ガスタービンの冷却技術の開発などを経験した後、水素航空エンジンの開発チームでリーダーを務める。

燃料が異なれば、全く別の航空機になる

水素航空機は、従来の化石燃料の代わりに液体水素を燃料として飛ぶ航空機。燃焼しても二酸化炭素を排出せず脱炭素へつながるため、カーボンニュートラル実現の大きな一歩となることが期待されます。しかし、水素で航空機を飛ばすことは容易ではありません。液体水素は、−253℃という極低温を保つ必要があり、加えて体積は従来燃料の約4倍。また、飛行中は安定した地上とは異なり気温も気圧も大きく変化します。燃料が異なるだけに思えますが、これまでとは異なる全く新しい航空機を作るプロジェクトになるのです。

たった数人で始まった、水素航空機のエンジン開発

航空機事業を長年行ってきた川崎重工でも、水素航空機の開発は今回がはじめて。私がこのプロジェクトに入ったとき、エンジンの担当は私を含め2、3人で、まさに手探りの状態で始まりました。それでも川崎重工として水素にはさまざまな面で何度もチャレンジし、困難を乗り越えてきた歴史があります。なかには花開かなかった案件もあるでしょうが、何度開発がストップしたとしても、ゼロになるわけじゃない。過去の研究や他部門での水素事業の実績を生かしながら、私も次へつなぐように、よりよい答えを探しているのだと感じます。たった数人だったチームも、現在は設計担当や図面オペレーターなど、メンバーが何人にも増えました。航空機の「キモ」といわれる燃焼器のバーナー部分の実験実施も、2022年度中に予定されています。

広い視野で、技術を社会実装する

水素航空エンジン開発では、チームのメンバーが具体的な開発のメインとなり、私はチームリーダーとしてメンバーのフォローや進捗管理を行いながら、社内外との連携や折衝も担っています。特に社外の方と接して改めて感じるのは、技術を社会実装することの重要性です。ただ目の前の技術と向き合うだけでは、開発は前に進みません。実際に社会からどのように求められるか。国内外の情勢が、開発にどう影響するか。少し広い視野を持つことで、作りやすい、使いやすい技術は育てられるのだと感じています。水素の有効活用がますます強く求められていくなか、2030年には私たちが手がけた仕事がカーボンニュートラル実現に寄与しているという手ごたえを感じつつ、チームみんなで水素航空機が活躍する社会への道を作ることができたらと願います。

※文中に登場する数値・所属などは2022年12月の情報です。

「Kawasaki ViSiON MAP 2030」は、川崎重工グループが思い描く2030年の姿を、現在の社員の仕事を通じて紹介します。新しいモビリティ、人々の生活を支えるエネルギーやロボット、そしてそれを実現するための組織体制。社会課題に対する「こたえ」にチャレンジしていく彼らの声に触れながら、わくわくするような未来を一緒に想像してみませんか?

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