カワサキとタッグを組み、新章をスタートさせたイタリア孤高の高級モーターサイクルブランド、ビモータ。COO(最高執行責任者)として新生ビモータを率いるのは、名エンジニアとして知られるピエルルイジ・マルコーニ氏です。1990年代に「TESI」をはじめとした名車の数々を手掛けたマルコーニ氏は、21世紀にどんなモーターサイクルを作ろうとしているのでしょうか。モーターサイクル界の伝説に、8つの質問をたずねました。
Q1. マルコーニ氏は、ビモータで最初に手掛けたプロダクトを「TESI」と名付けました。その名前に込めた意味を教えてください。
「TESI」はイタリア語で“論文”を意味します。大学に通う全ての学生が卒業するにあたって執筆するものですね。卒業論文、学位論文と訳されることもあるでしょう。私、ピエルルイジ・マルコーニと(友人の)ロベルト・ウゴリーニは、学位を取得する際にボローニャ大学の教授へモーターサイクルの新しいコンセプトをまとめて提出しました。そういった理由から、(そのコンセプトを使って)ビモータが 最初のプロトタイプを試作したとき、即座に「TESI」と名付けたのです。
Q2. ビモータにとって、イタリアンクラフトマンシップはどれくらい重要なものなのでしょうか。
数千年もの昔から続く歴史をもつ伝統的なイタリアの職人技術、すなわちイタリアンクラフトマンシップの価値は世界中で評価されています。我々は、常にものづくりにこだわる会社であり続けてきました。
最高のパフォーマンスをもつモーターサイクルのための特別なコンポーネンツを、自分たちの手で作ることからビモータはスタートしました。やがてコンプリートモデルを手掛けるようになっても、 クラフトマンシップの精度はそのまま継承してきましたし、そのポリシーは今も変わりません。
クラフトマンシップにこだわってものづくりを行うことには利点があります。全てのビモータ製モーターサイクルは人間が作り、人間がチェックします。つまり、細部に至るまで職人の手を経るためにクオリティを高めやすいのです。
ビモータのモーターサイクルは水滴のように、まったく同じように見えて、実は1つとして同じものがありません。
Q3. カワサキ製エンジンの美点や他社メーカーとの違いについて教えてください。
これは難しい質問ですね。
他社製エンジンとの違いで最も重要なのは、カワサキ製エンジンは多くの電子デバイスを備えた状態で供給されるという点と、すでに優れた電子制御技術をベースにビモータが開発をスタートできる点です。
公道で乗ることのできる世界最高のパフォーマンスを備えたエンジンであり、モーターサイクル市場で一番の選択肢といえるでしょう。
Q4. 2021年のEICMAショー(ミラノ国際モーターサイクルショー)で「KB4」の派生モデル、「KB4 RC」が発表されました。「TESI H2」にも新バージョン追加の可能性はありますか。
EICMA 2021で披露したコンセプトスケッチに見られるように、我々はあらゆる可能性を追求しています。
でも、その話をするにはまだちょっと早すぎるかもしれませんね。まずは「TESI H2」と「KB4」のライディングを楽しんでいただけたらと思います。
Q5. 新生ビモータは今後どのようなモーターサイクルを生み出していくのでしょうか。
さまざまなセグメントに参入していきたいと考えています。もちろん常に最高のパフォーマンスを備えたカタチで。
我々の言う“パフォーマンス”とは、必ずしも最高出力の数値だけを意味するものではなく、ブレーキの性能やハンドリング、車両重量、TESIのように革新的なシャシー、もしくはレーサーレプリカのシャシーのようなものを含めた意味合いです。
Q6. ハブセンターステアリングという機構に着目した理由を聞かせてください。
若い頃から、前輪と後輪をつなぐフレームが1mもの長さに達していることが理解できませんでした。
前後ホイールをできるだけ短い距離で結ぶことはできないだろうか? ステアリングとサスペンションの機能を分離できないだろうか? そう考えた結果、TESIプロジェクトのコンセプトが生まれました。
Q7. あなたが考える「理想のモーターサイクル」はどんなものですか?
どのようなパフォーマンスであっても、(理想のモーターサイクルの)デザインは技術的な要件に基づいたものでなければなりません。
Q8. ビモータを愛するファンに向けて、メッセージをお願いします。
もちろんです!
我々は、全てのビモータファンに喜んでいただけるよう、懸命にモーターサイクルづくりに取り組んでいます。最新の2モデルは、きっと皆さまを驚かせることができたと信じています。
これからも、新しいビモータのモーターサイクルで皆さまへ驚きをもたらし続けていきたいと思います。ビモータの革命はこれからも続いていきます。
イタリア・リミニ出身。1983年にビモータへ入社。同社でテクニカルディレクターを務めた後、1998年にアプリリアの研究部門へプロジェクトリーダーとして転身。2001年にはベネリのテクニカルディレクターに着任、2005年にベネリ Q.J.の副ゼネラルマネージャーとなり、以降もさまざまなポストを歴任。2019年、ビモータS.p.A.のCOOに任命された。