川崎重工は、小中学生を対象としたロボットについて学べるイベント「カワサキロボットエンジニアになろう!」を2018年から開催しています。2023年には、東京都が主催する「こどもスマイルムーブメント」の取り組みである「こどもスマイル大冒険」において、「こどもスマイル大賞」(体験してみたい部門)を受賞しました。本記事では、企画・立ち上げ時からイベントに携わる合田 一喜さんに、川崎重工だからこそ提供できる学びについて聞いてみました。
「カワサキロボットエンジニアになろう!」とは
最初に、「カワサキロボットエンジニアになろう!」について簡単に教えてください。
「カワサキロボットエンジニアになろう!」は川崎重工のロボット部門が開催する子ども向けのイベントです。
小学校3年生から6年生を対象に、産業用ロボットの基礎知識を学んで本物の産業用ロボットの操作体験ができる「操作編」。また、小学校3年生から中学生を対象に、プログラムを作成してロボットを動かす「プログラミング編 」。2つのイベントがあります。
注目していただきたいのは、実際に工場で稼働している産業用ロボットを使用するということ。教材用のデモ機ではなく、本物だからこそ味わえる難しさや面白さがあります。
社会のあちこちで活躍する、産業用ロボットの役割と未来を知ることができる。
産業用ロボットメーカーの川崎重工が開催する、本物の産業用ロボットを使ったイベント。子どもたちはどのような学びや面白さを得られるのでしょうか。
そもそも子どもたちは、産業用ロボットの存在をよく知りません。しかし実際は社会のさまざまな場所で活躍しているのです。まずは座学で、産業用ロボットが活躍しているシーンを伝えるようにしています。たとえば、自動車の製造工場ではさまざまな種類のロボットが自動車を組み立てたり、塗装をしたりしていますし、他にも食品加工工場など、社会の至る所で活躍しています。長年、産業用ロボットと関わってきた川崎重工だからこそ話せることです。この点は、子どもたちだけでなく、意外と保護者のみなさまからも「知らなかった」と興味を持っていただけるところですね。
また、ロボットが活躍する未来についても、同時に話しています。よく「ロボットやAIが人間の仕事を奪う」なんて聞きますが、ロボットは人と対立する存在ではない。協業したり助け合ったりする存在なんですよね。現在の産業用ロボットは人にとって代わって危険な作業をしたり、人手不足を補ってくれる存在ですが、今後は工場の中だけではなく、さまざまな場所で人とロボットが一緒に仕事をするようになる。そういった未来をつくるのが、みなさんなんですと伝えています。
体験型のイベントですが、座学でロボットやロボットとの未来について伝えることも重視しているのはなぜですか?
ロボットの操作体験やプログラミング体験は、本物を使っていることもあり、非常に楽しんでいただいています。しかしそれだけで終わってしまうと、ただゲームで遊んだような、一時の楽しさで終わってしまう。それ以上の学びを得て欲しいなと考えています。
あるとき、プログラミング教室の先生から課題として伺ったことがあるん です。習い事としてのプログラミングは人気があるし、子どもたちも楽しんでくれる。しかしそれが将来どのように自らの役に立つか、社会の中でプログラミングはどんな意義があるか。そこがわからないと結局途中で辞めてしまうことも多いとのことでした。プログラミングよりも受験勉強しなきゃ、と優先順位が下がってしまうそうです。
そのため、私たちは目の前の技術の面白さだけでなく、それが社会とつながっていること、社会をつくっていることを感じてほしいと考えます。それをきっかけに自分の将来の職業選択のきっかけになってくれたら嬉しいですよね。
なぜ、川崎重工がロボット人財育成を行うのか。
「カワサキロボットエンジニアになろう!」には、ロボットを通じて、あるいはプログラミングなどのスキルを通じて、ロボットと人の関りについて学んでほしいという願いが込められているんですね。そもそもどのような目的でイベントを立ち上げられたのでしょうか?
近年デジタルに強い人財育成の必要性が強調されている一方で、いわゆる「理系離れ」が課題とされています。当社は以前から子どもたちがロボットと触れる機会の提供はしていましたが、ロボット人財を育成したいという想いから2018年から本格的に小中学生向けのロボットイベントを開始しました。
2019年には経済産業省が主導したCHERSI(未来ロボティクスエンジニア育成協会、略称:チェルシー)という、企業と教育機関が一体となり、ロボット人財の育成に取り組む組織が発足しました。当社はチェルシーに参画していますが、チェルシーで対象としているのは、主に工業高校と高等専門学校です。本物のロボットを体験できる小中学生向けのロボット教室は他にないと思います。
2018年から人財育成を目的としているとのことでしたが、イベントを開始当初と現在(2024年)で変化したことはありますか?
たとえばイベントの内容を少し変えています。2018年当時はロボットに触れてもらい、まずは興味を持ってもらおうとしていました。しかし現在は小学校でもプログラミングを扱うことがあるため、すでにロボットへ興味を持っている子も増えています。そこでプログラミングを実際に行う「プログラミング編」を始めました。さらに参加者の顔ぶれ にも、変化を感じます。最初はロボットが好きな男の子が多かった印象ですが、イベントを重ねるにつれて、最近は男女問わず参加していただいています。
参加したお子さんや保護者の方からの反応について、印象的だったことはありますか?
本物のロボットを実際に動かせる経験はなかなかないので、シンプルに楽しんでくださる方が多いですね。上手くいかず必死になるお子さんの姿を見て、「普段見られない子どもの熱中する一面が見られた」と喜んでくださる保護者の方もいます。
「カワサキロボットエンジニアになろう!」をきっかけに、ロボットについて自由研究を 行ったり、プログラミング教室に通い始めたりした子もいるんです。そういった報告を受けると、イベントを行っている立場としても非常に嬉しいです。
さまざまな場所、さまざまなやり方で、ロボットに触れる機会をつくる。
「カワサキロボットエンジニアになろう!」の今後 について。課題や展望をお聞かせください。
遠方の学校やプログラミング教室から、「カワサキロボットエンジニアになろう!」を出張開催してもらえないかと打診をいただくことがよくあります。でも本物の産業用ロボットの使用にこだわるからこそ、イベントを量産化できず地方やオンラインでの開催が難しいのが現状ですね。本物に触れていただく醍醐味は今後も大切にしたいですが、バーチャルとリアルを併用するなど違うやり方も模索したいです。
今後の展望は、現在「操作編」「プログラミング編」とふたつあるイベントの、バリエーションをさらに増やすこと。「プログラミング編」を体験して、もっとロボットについて学びたいというお子さんがいますが、現状は次のステップを用意できていません。せっかくロボットに興味を持っていただいたので、次につながるプログラムを考えていきたいです。
冒頭にお話したように、ロボットの活躍は今後社会の至る所に広がっていきます。引き続きロボットに触れて、学ぶ機会を提供していきたいと考えています。
子どもたちへ、ロボットとともにつくる未来を提供する
さまざまな場所で活躍し、私たちの身近な存在になりつつあるロボット。今後さらに活躍機会が増えていけば、ロボットが私たちのすぐ隣にいる光景も当たり前になっていくのかもしれません。そんな未来へ向けて、ロボットを知り、ロボットと社会のつながりを知るイベントが「カワサキロボットエンジニアになろう!」。ロボットを通じて、子どもたちとともに未来を考えるきっかけをつくることができたら嬉しいです。
ロボットを見て、触れて、動かそう!
川崎重工は、人々の生活を支えている”産業用ロボット”を実際に見て、触れて、動かすことができる、ロボット操作体験イベント「カワサキロボットエンジニアになろう!」をはじめ、ロボットを身近に感じることのできるイベントを開催しています。
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