ALICE Aircraftは、プライベート空間と共有エリアを両立させた航空機。飛行中でもラウンジエリアへ移動でき、自由にくつろぐことができる。機内でもストレスなく行き来できるよう、車いす同士でもすれ違える1.5mの通路幅を確保。パリまで飛べる水素燃料を積載するため、最も体積効率のよい機体形状「ブレンデッドウィングボティ (BWB)」を採用している。

ALICE Aircraftの大きな特徴であるラウンジエリアでは、景色を見ながら食事を楽しんだり、天窓から満点の星空を眺めたりすることができます。車いす利用者や体の不自由な方、お子様連れの方にも大型クルーズ船のような移動体験を楽しんでもらえるよう、これまでの旅客機にはないゆったりとした空間設計にこだわりました。
というのも、今、皆さんが飛行機に乗るときに感じている不便さは、シートベルトを着けてずっと座っていなければならないことだと思うんです。機内を自由に移動できるALICE Aircraftが実現すれば、飛行体験の大きなブレイクスルーになるかもしれません。

キャビンのドッキング方法は、かなり悩んだポイントです。自衛隊の輸送機のように機体後方からキャビン入れる方法もありますが、それではまるでお客様を荷物のように扱っているようですし、コンテナのように吊り下げて天井から入れようとすると、高さや揺れからお客様を怖がらせてしまうかもしれません。結局、機体側面からのドッキングが最も安心感の高い移動体験ということに落ち着きました。

また、現在の飛行機が直面する課題の一つに、安全性の確保があります。もし、キャビン自体を免震構造にすることができれば、「機体が揺れてもキャビン内は揺れない」という仕様にできるかもしれませんし、緊急脱出時にはキャビンごと機外に飛び出すという手段も有効かもしれません。いずれにせよ本機の実現には、技術の発展はもとよりレギュレーション(安全に対するルールや規制)のブラッシュアップも同時に考えていく必要があると思っています。

航空宇宙技術本部 技術開発総括部 システム技術開発部
機体計画技術課 兼 水素航空機コア技術研究プロジェクト総括部