大量航空輸送時代を支える数多くの民間航空機。川崎重工は、その主役のエンジン開発に不可欠な存在として関わってきました。
V2500 国際共同開発に参画
日米欧5カ国による「V2500」の国際共同開発に、日本航空機エンジン協会の一員として参画。ファンケースや低圧圧縮機、補機、艤装配管部品の設計と製造を担当しました。V2500はエアバスA320などに搭載されています。
PW4000 RRSPで初の参画
米国プラット・アンド・ホイットニー社(P&W社)との「PW4000シリーズ」エンジンの開発・製造プロジェクトに初めてRRSP*方式で参画。ケースやシャフト、シールリング(空気や高温ガスをできるだけ通さないようにするための部品)、ベーン(静翼)などの部品を担当しました。ボーイング747、767、777、エアバスA300、A310、A330などに搭載されています。
*RRSP(Risk & Revenue Sharing Partner)=開発や製造のコスト、Riskを応分負担し、その比率に応じて利益分配を受けるパートナーのこと。
Trent 1000 RRSPでIPCモジュールを担当
英国ロールス・ロイス社(RR社)の「Trent1000」の開発・製造プロジェクトにRRSP方式で参画。従来とは異なり、中圧圧縮機(IPC)モジュールを担当して設計段階から参画しました。
IPCモジュールはエンジンのファンと高圧圧縮機の間に位置し、ファンからの圧縮空気を7倍に昇圧する重要な部位。設計、製造、組立、さらには開発プログラムの一環であるエンジン試験の一部も担当しました。ボーイング787に搭載されています。
PW1100G-JM 「V2500」後継機も共同開発
エアバス社の最新鋭旅客機A320neo用エンジンで、ファンや低圧圧縮機部の主要部品の開発、生産、整備を担当。「PW1100G-JM」は、先進のギアシステムの採用により、低圧圧縮機や低圧タービンと異なる低い速度でファンを駆動させられるギアード・ターボファンエンジンで、先進的な材料や要素技術により燃焼、排気ガス、騒音レベルなどの改善がなされています。
川崎重工の民間航空機用エンジンの開発は、多くの国際共同開発プロジェクトを通じて技術を磨き、今や「新開発には欠かせないプロジェクトパートナー」との評価を得ています。
1971年、通産省工業技術院(現・独立行政法人産業技術総合研究所)主導による航空機用ジェットエンジンの研究開発が始まりました。その成果である「FJR710」は、短距離離着陸機「飛鳥」に搭載されて世界的な評価を得ます。それを背景に、1983年には150席クラス用エンジン「V2500」の国際共同開発へと発展。さらにP&W社やRR社の国際共同開発にRRSPとして順次参画。
以降、ボーイング787用「Trent 1000」、エアバスA350XWB用「Trent XWB」、エアバスA320neo用「PW1100G-JM」、リージョナルジェット機用「PW1500G/1900G」、エアバスA330neo用「Trent7000」などのプログラムに参画します。
現在、世界の空の「主役」として活躍する多くの航空機に川崎重工が開発の一翼を担ったエンジンが搭載されています。
この間、部品の製造技術においても全工程における生産と管理の両システムを融合させたFMS(Flexible Manufacturing System)化を実現。この運用システムは、ジェットエンジン部門とFA・ロボット部門が共同で開発したもので、“All Kawaski”の神髄が示されています。