世界のエネルギー供給を支えるLNG運搬船

公開日2017.07.31

LNG(液化天然ガス)は、石油や石炭に比べて燃焼時の二酸化炭素排出量が少なく、低炭素社会に欠かせないエネルギーです。川崎重工は1981年に、国内で初めてLNG運搬船を建造しました。世界のエネルギー供給を支えるLNGを、速く、大量に、安定して運搬するための技術を紐解きます。

LNG運搬船の進化をリードする

天然ガスを-162℃で冷却して液化させて運搬するLNG(液化天然ガス)運搬船。わが国で初めてLNG運搬船を建造したのが、川崎重工です。

LNG運搬船に求められる技術ポイントは3つ。①船を省エネで速く航行させる「推進性能」、②MOSS(球形)方式タンクで船の容積を変えずにタンク容量を大きくしたり、ガスの揮発を少なくする「タンク性能」、③操舵手がコントロールしやすく輸送運用の効率化に資する「オペレーター性能」です。

推進性能は、航行中に海水から受ける抵抗を減らすための水線下の船型の最適化やエンジン性能の向上などによってもたらされます。特に船型の最適化は、長年にわたるLNG運搬船建造と航行実績による経験知が技術力の差に直結します。その点、国内でのLNG運搬船を第1号から造ってきた川崎重工の知見の蓄積は、他社を圧倒しているのです。

タンクから気化したガスを燃料として利用しつつも、余ったガスを再液化する独自の仕組みを備えた燃料供給システム「二元燃料焚き低速ディーゼル推進(ME‐GI)プラント」の開発にも成功しました。ガスの気化率では世界最小を実現しています。

さらに、世界の主要なLNGターミナルに入港できる船型を維持し、新パナマ運河を通峡できる船幅を保持したまま18万m3の大容量輸送を可能にする非真球型タンクも開発。船舶運用の選択肢を増やしています。

Kawasakiの技! 世界最小のガス気化率をもたらす最新の省エネエンジン

LNG船用エンジンとして主流になりつつあるのが「二元燃料焚き低速ディーゼルエンジン(ME-GI)」です。カーゴタンク内で気化したガス(Boil Off Gas,以下BOG)と舶用の燃料油の両方を併用できるもので、独自の船型と合わせて燃費性能は大幅に改善しています。

さらにエンジンプラントに川崎重工独自の「部分再液化装置」を加えることで、LNGの自然気化率(Boil off Rate)で世界最小の0.05%/日を達成しました。BOGのうち燃料として使われなかったガスを部分的に再び液化する仕組みで、いわば「もったいないをなくすシステム」が誕生しました。

Kawasakiの技! タンクの性能

新形状タンクは、従来の真球形状のMOSS型タンクの垂直断面を正方形に近づけるように変形させた非真球型で、船体とタンクのすき間を減らすことで、MOSS型の優れた特徴である耐スロッシング性(液揺れ)や検査の容易性を保ちつつ容積効率の向上を実現させました。

タンクの高さを低く抑え、船橋からの視野や船体が傾いた際に、元の姿勢に戻ろうとする「復元性」も向上しています。

新パナマ運河に対応した18万mの新形状タンク

Kawasakiの技! タンクの防熱

川崎重工が独自に開発した断熱パネル(川崎パネル方式)でタンクを覆っています。このパネルは、タンク側がフェノールフォーム、その外側がポリウレタンフォームの二重構造で、さらに外側にアルミニウムの膜が貼り付けてあります。

防熱パネルは厚さが約200〜360mmで、LNGの自然気化率(Boil off Rate)を最高0.075%/日までに抑える優れた断熱効果があり、他社が建造するLNG運搬船にも採用されています。

タンクドーム

タンクの頂部にあり、配管を貫通させています。また、タンクへの入口などが設けられています。

タンクの収縮

−162℃のLNGを収納すると、低温収縮でタンクの直径がおよそ150mm縮みます。しかし、タンクを支えているスカートの上部も冷やされて自然に収縮し、タンクの収縮を無理なく吸収することができるのです。

パイプタワー

タンクの中央部に配置されたタワーで、中には荷役用の配管、揚荷時にLNGを陸上に供給するカーゴポンプ、階段、計装装置などが収められています。カーゴポンプは、LNGの揚げきり性能をよくするためにパイプタワーの最低部に設置されています。

川崎重工業株式会社
船舶海洋カンパニー
技術本部基本設計部
基本計画第二課
課長
野崎 拓海
川崎重工業株式会社
船舶海洋カンパニー
技術本部基本設計部
基本計画第二課
主事
印藤 尚子
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