つくる人も乗る人もワクワクする車両で、 安心の日常と感動の未来を

公開日2021.12.24

2021年10月1日、川崎重工の鉄道車両事業は、川崎車両株式会社として新たなスタートをきりました。社長に就任した村生弘が掲げる、川崎車両の目標や社会へ提供する企業価値についてご紹介します。

川崎車両株式会社
代表取締役社長執行役員
村生 弘
PROFILE

1959年大阪府生まれ。1982年、川崎重工入社。車両カンパニーにて営業本部長や営業統括執行役員などを経て、2021年4月、常務執行役員(川崎重工 車両カンパニープレジデント)就任。2021年10月より、川崎車両株式会社 代表取締役社長執行役員。

いまこそ、変革のチャンス

川崎車両として新たな門出を迎えて、会社として目指すことは?

村生

新型コロナウイルスの感染拡大は、社会や産業にさまざまな影響を与えています。鉄道会社や航空会社などの運輸業界では、人流の大幅減少で打撃を受け、投資計画に影響を及ぼしています。しかし、私はこのような困難な状況こそ、変革のチャンスだと考えています。川崎重工の鉄道車両事業は、1906年に製造を開始して以来、鉄道モビリティの進化に貢献してまいりました。革新的な技術力、高い品質と生産力を追求し続け、機関車、客車、貨車、新幹線を含む電車、新交通システムなどその時代の最先端技術を駆使したさまざまな車両のほか、関連システムや機器を社会に提供してきました。

そして事業をはじめてから115年となる本年、自律的事業経営の徹底と業界関係各社との連携・協業に機動的かつ柔軟に取り組むこと、また、新たな事業領域の開拓を目的に、「川崎車両株式会社」として新たなスタートをきりました。社会や業界が変化しているのに、従来通りのやり方を続けていては生き残ることはできません。社員もみな、いまこそ変わるチャンスと考え、前向きにとらえて業務に取り組んでいます。

新会社の目標は、新たな市場を堀り起こして多彩な事業スタイルを築きあげることですが、現在は2026年を目処にニューヨーク市交通局(NYCT)へ地下鉄電車を納入するR211プロジェクトに注力し、社内外すべてのステークホルダーの信頼と期待に叶う成果を出すことだと考えています。オプション契約が行使されると、総数1,600両以上、売上高4,000億円を超える過去最大規模のプロジェクトになります。また、東南アジアなど新興国では、経済発展に伴う鉄道インフラニーズが高まり、今後も市場の成長が期待されており、積極的に取り組んでいきたいと考えています。

業界各社との連携・協業では、川崎重工はこれまでも、台湾の台中市都市交通機電システム※1や、シンガポールの陸運庁向けMRT電車※2など、さまざまなプロジェクトにおいて社外とのパートナリングにリーダーとして取り組んできました。今後も、当社がイニシアティブを発揮しつつ、他社との信頼関係を築きながら、競争力をより高めていきます。新会社となったことで、車両を生産し提供するだけにとどまらず、お客さまのニーズに合わせて保守やシステム面など、より幅広い事業フィールドにおいて柔軟かつスピーディーに連携をしていきます。

米国現地法人Kawasaki Rail Car, Inc.を通じて、ニューヨーク市交通局向け新型地下鉄電車「R211」の初編成を納入

川崎重工グループの技術を結集し、「サービス提供型のビジネス」へ

川崎車両は今後、どのような社会課題やニーズに対応していくのでしょうか?

村生

質の高い日本の鉄道インフラを車両メーカーとして支えるという社会的責任は大きく、お客さまを安全・安心にお運びするという使命と責務はこれからも変わりません。中でも、鉄道事業者が安定・安全運行のために多くのコストと労力を費やす保守業務に、当社がどう貢献できるかを考えています。

当社は軌道の保守に着目した技術開発やサービス展開に注力しています。日本では鉄道事業者による保守体制はしっかりと構築されていますが、海外ではそうではないこともあるため、ビジネスチャンスがあると考えます。2021年4月からバングラデシュのダッカ都市交通会社向け都市高速鉄道車両を納入していますが、プロジェクト全般を管理し、車両および車両基地設備の供給とそれらの保守業務の支援も行っています。車両供給ビジネスをコアとしながら、マーケットインの姿勢でお客さまの困りごとやニーズにお応えする「サービス提供型のビジネス」への変革をしていきます。将来的には、車両を含めたシステムの供給、保守までワンストップで提供できるように、事業フィールドも広げていければと考えます。

バングラデシュのダッカ都市交通会社向け都市高速鉄道6号線車両を納入。川崎車両は鉄道整備を通じて、海外においても安全・安心な社会の実現に貢献していく

川崎重工グループとしての総合力をどのように生かされるのでしょうか?

川崎重工は、モーターサイクルをはじめ、船舶やロボット、航空機など、陸・海・空で幅広く事業を展開し、全社横断で研究開発を行っています。異なる製品の技術を相互に活用することで、より競争力のある新製品の開発や新事業への参入が可能となり、グループ全体で大きなシナジー効果を発揮できる点が、競合他社と差別化できる大きな強みです。

例えば、当社は北米で鉄道の軌道遠隔監視サービスを開始しましたが、これは川崎重工で培ってきた解析技術、センシング技術を生かした「軌道状態監視装置」を導入しています。センサーやカメラなどの監視装置を営業車両に設置し、営業運転時に軌道の状態を計測し、解析したデータを鉄道会社に提供します。通常、線路の点検は専用検測車両の走行、徒歩巡回による目視点検などが定期的に行われていますが、人手もコストもかかります。この軌道遠隔監視サービスなら、軌道監視の頻度を短縮しながらメンテナンスの効率化に貢献できます。

村生

また、鉄道は他の交通機関と比較すると走行中のCO2排出量が少なく、環境に優しい公共交通です。世界的にカーボンニュートラルの取り組みが求められていますが、当社では鉄道車両用の水素供給システムを提供しています。さらにエネルギー効率を高めるために、例えば電車の走行用電力を水素発電所から供給すればより効率的にカーボンフリーが達成できます。そのほか、ロボット技術を活用した工場のオートメーションなどもご提案できるでしょうし、今後も川崎重工グループの総合力を生かして、さまざまなソリューションを提供していきたいと思います。

安心の日常と、感動の未来を 

村生社長が考える車両ビジネスの価値や大切にされている想いは?

村生

川崎車両の設立にあたって、新しい企業理念を「私たちは、ものづくりと技術革新への挑戦を続け、安心の日常と感動の未来を約束します」と定めました。車両に乗っていただくお客さま、鉄道事業者、車両を造る川崎車両の社員たちの「安心の日常」と、皆さまに乗りたいと思っていただける車両を造り、その車両を生み出す私たち社員がやりがいや達成感を持てる仕事をする「感動の未来」を約束するものです。この理念は、額に飾って唱和するものではありません。そこで、社員に向けて企業理念を浸透・実現していくためのムービーをつくり、さまざまな人に川崎車両について語ってもらいました。その中で多かったのが、「子供が乗ったらワクワクする車両をつくりたい」という声です。

私自身、子供の頃に岡山に住んでいましたが、吉備線を走るSL列車を毎日ワクワクしながら眺めていたことが鉄道好きになったきっかけです。岡山から大阪に行く時に初めて乗った151系特急電車「うずしお」の快適さに感動し、乗る人に感動を与える車両を造り、夢を運ぶ鉄道の仕事をしたいと考えるようになりました。当社が製作した、JR九州の「ななつ星in九州」用機関車、JR東日本の「TRAIN SUITE 四季島」、JR西日本の「瑞風」などは、「子供がワクワクする」代表的な車両と言えるのではないでしょうか。製作にかかわった人たちにとっては多くの苦労がありましたが、完成させ納入できた時の達成感は大きかったと思います。

今後は水素で走る車両など、先進的な技術を活用することで社会の課題解決に貢献していくとともに、つくる人も乗る人も、みんながワクワクする車両をこれからもつくっていきたい、という想いが私たちの根底にあります。そして何より大切なのが、安全面において一切の妥協を許さない車両をつくること。そのような安全と感動をお届けするものづくりに携わる誇りを胸に、社員一丸となって挑戦を続けていきたいです。

TRAIN SUITE 四季島
ななつ星in九州
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