モーターサイクルファンからは、「もう出ることはない」と思われていた250CCクラスでの4気筒エンジン搭載車。しかし川崎重工は、そんなファンの諦めを美しく裏切りました。2019年の東京モーターショーで試作車が公表されると大反響を呼び、2020年秋の発売早々からヒット商品になっているのが「Ninja ZX-25R」です。
30年ぶり250ccでの4気筒エンジンモデル
新開発の4気筒エンジンは、1万7,000rpm以上の高回転を実現。高速でのスポーツ走行を存分に味わえる一方で、日常使いの低中速域でもスムーズに加速します。クラッチ操作なしでシフト操作を可能にする「クイック・シフター」は、250CC車としてははじめて装備されました。
開発責任者の川崎重工 技術本部 第一設計部 第一課の山本 哲路 基幹職は、「パワフルなエンジンでの走行を楽しみつつ、峠道のコーナーではクイック・シフターによりブレーキ操作に集中できる、といったような最新装備が付いているので、ZX-25Rに乗れば、より一層スポーツライディングを楽しめるはずです」と胸を張ります。
「兄貴」格のNinja「ZX-10R」や「ZX-6R」の思想を受け継ぎ、開発だけでなく調達や製造、品質保証などのスタッフも、「ZXとはこうあるべきだ」との思いを共有しています。また一つ、「新しい所に点を打つ」という川崎重工らしさが出ました。
Kawasakiの技!250CCクラス初の先進電子制御を惜しみなく投入
KTRC(カワサキ・トラクション・コントロール)は、3つのモードで幅広い走行条件をカバーしています。KQS(カワサキ・クイック・シフター)は、クラッチ操作なしでシフトアップとシフトダウンが可能です。ライダーの負担を軽減しながら、加速時も減速時もシームレスなギヤチェンジにより、スポーツ性の高い走行を支えています。
Kawasakiの技!高速域のパワーと低中速域のトルクを両立した4気筒エンジン
完全新設計の水冷4ストローク並列4気筒エンジン。最高出力36.8kW(50PS)を発生し、1万7,000rpm以上の高回転域を実現。低中回転域の強力なトルクと高回転域の鋭いパワーを両立したフレキシブルなエンジン特性が持ち味です。
燃焼室形状の精度向上のためにシリンダーヘッドの燃焼室形状を総削りにしたり、吸気効率向上のために吸気ポートの形状などを工夫。さらに、高回転域でのフリクションロス低減などで性能を向上させています。高回転域での「キーン」という音がライダーの高揚感を高めます。
Kawasakiの技!ボリューム感はあるが肥大化もしないスタイリング
車体はミラーやハンドルなどを除くカウリングの全幅だけで比較しても、2気筒エンジンモデルと4mmしか違わないサイズに抑えられました。これで2気筒エンジン車から乗り換えても違和感はありません。また過度な前傾姿勢を強いることなく、優れた操作性を堪能できるライディングポジションを実現。燃料タンクは、ニーグリップ時にマシンと良好な一体感が得られるようなスリムな形状を採用しています。
レースマシンの思想を受け継ぐフレーム設計
シャシーデザインは、スーパーバイク選手権から得た設計思想をベースに250ccの4気筒のスーパースポーツとして最適化しています。またシャシーデザインと鉄フレームが合わさることで、路面や車体の状況などの情報がライダーに分かりやすくフィードバックされるので、ライダーは一体感と安心感をもってスポーティーな走行を楽しむことができます。
エキゾーストシステム
エキゾーストパイプには、「4-2-1」の集合レイアウトとバイパスパイプを採用し、低回転域でも力強いエンジンとなりました。マフラーには4.5ℓの大容量チャンバーを採用して小型化。クールなスタイリングはもちろん、低重心化や重量を車体中心部に集める「マスの集中」により運動性能の向上にも貢献しています。
モーターサイクル&エンジンカンパニー
技術本部 第一設計部
第一課
基幹職
モーターサイクル&エンジンカンパニー
技術本部 第二設計部
第三課
主事