六甲アイランドと神戸の街をつなぐ、六甲ライナー3000形開発のこだわり

公開日2018.10.31

神戸新交通「六甲ライナー3000形」は、1990年の開業以来、30年以上にわたって神戸市街と六甲アイランドを結んできた六甲ライナーの新型車両です。コンセプトは、「六甲ライナーのある暮らし」を実感できること。神戸の街の魅力を随所に取り入れながら、独自の設計により幅広い社内と障がいのある方も乗り降りしやすい構造を実現しました。市民の暮らしに溶け込む車両づくりには、技術者たちの細やかな心配りと知恵が隠されています。

「六甲ライナーのある暮らし」をより感じてもらいたい

神戸市街地と六甲アイランド(住吉~マリンパーク間)を結ぶ神戸新交通の六甲ライナーは、2018年8月31日から新型車両「3000形」の営業運転を開始しました。1990年に開業して以来の車両リニューアルで、今後、2023年度末までに六甲ライナーの11編成、全44両を新型車両に更新していきます。

現行の「1000形」に引き続き新型車両の開発を託されたのが川崎重工です。開発チームは、「六甲アイランドと六甲ライナーの魅力とは何か」の原点に戻り、121人の利用者にWebアンケートを行い、各年齢層の利用者4名を交えて「共創会議」を実施しコンセプトを詰めていきました。

その結果が、海の手六甲アイランドならではの朝焼けや夕焼けの美しさ、橋を渡って島に帰るときの安堵感など「六甲ライナーのある暮らし」を実感できる車両にすることでした。

まず、車両の外観は、海を渡り六甲アイランドへつながることからシャープな船舶のシルエットをモチーフとし、カラーリングは神戸にある最古のガス燈にちなみ、緑青を基調とした落ち着いた色彩としました。

また、車幅(通路幅)を14センチ広げて室内空間を拡張したり、座席の背もたれに開口を設けることで外光を車内に取り入れやすくするなど、きめの細やかな工夫が随所に盛り込まれています。

六甲ライナー社内デザイン
六甲ライナー1000形と3000形の仕様比較

安全と快適の新次元へ

沿線の美しい景観や外光を車内に取り込む大きな窓には、瞬間曇りガラス(住宅地に隣接する側の窓)を用いて沿線のプライバシーに配慮。また、各車両の両端には防犯カメラ、そして鉄道車両用プラズマクラスターイオン発生機を設置して衛生的な車内環境を創造するなど、安全と快適さの両立を目指しました

六甲ライナー社内・プラズマクラスターイオン発生機
六甲ライナー社内・曇りガラス
曇りガラスON(左)/OFF(右)

Kawasakiの技!最新の技術をコンパクトに搭載

「3000形」では天井を高く、車幅を広く、床面を下げて室内空間を広げたことで、その分、各種の機器類のスペースは大幅に縮小。本来長さが18~20mの車両に搭載する各種の機器を、ギュッと8mの車両に押し込まなければなりませんでした。機器類の形や配置をゼロベースから見直し、小型でも従来機と同じ性能を発揮させるなど、コンパクト化と高機能化を実現しています。

Kawasakiの技!主制御装置「CI(コンバータ・インバータ)装置」

電圧と周波数を変えて加減速を制御する主制御装置。3000形では主制御装置の部品に、最新の新幹線と同じ最先端のSiC(シリコンカーバイド)を採用しました。従来のSi(シリコン)部品に比べ、絶縁破壊電界強度が10倍になると同時に、冷却ファンがいらないので消費電力を減らせたり、低騒音化、小型・軽量化、メンテナンスの簡易化など、多様なメリットを生み出しました。主制御装置のSiC化は、都市型新交通では日本初の採用です。

夜の神戸の街を優しく照らすトーチ

「家族の待つ六甲アイランドに帰る」。そんな安堵感を表現するために先頭上部にはトーチをイメージした照明を取り付けました。離れた場所からの視認性の向上に加え、夜間走行時に昼間とは異なる表情で沿線を演出します。

六甲ライナー・正面
六甲ライナー・開発者説明1

個別タイプの座席は車内の採光にも配慮

座席は一人のスペースが分かる個別タイプ。背もたれ背面は、外光を取り入れて車内を明るくするために開口を設けています。

六甲ライナー・開発者説明2

すべての車両に車いす用スペースを確保

車いすやベビーカー用のスペースの床は、床の色で簡単に識別できるようになっています。車両の床面高さを下げてホームとの段差も解消しており、高いバリアフリー化を実現しました。

六甲ライナー・バリアフリー

荷物棚の秘密?

天板のある荷物棚には、手すりが付けられています。実は、この四角いスペースの中には各種の制御機器が納められており、機器類をコンパクトに納め、快適性も高める設計になっています。

六甲ライナー・車いす・ベビーカー用スペース

アルミニウム合金を採用した構体 

周囲に溶け込むデザインとするため外面を塗装することから、車両の骨格となる構体材料には、ステンレスよりも塗装性の良いアルミニウム合金を採用しました。

また、ゴムタイヤ台車で走行することや、小さな車体に多くの機器が搭載されることから重量の制約が大きいのですが、加工性がよく、肉抜き加工が容易であるアルミ合金仕様は軽量化にも寄与しています。

「1000形」より騒音が低減されたモーター

台車部分のタイヤには乗り心地の向上と騒音の低減を図るために中子式チューブレス窒素ガス入りゴムタイヤ、モーターには低騒音型のモーターをそれぞれ採用しています。冷却ファンの形状を見直すことで空力音も低減され、従来の「1000形」と比較してモーターの騒音は約7dBも低減されています。

六甲ライナー・開発者説明3
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川崎重工業株式会社
車両カンパニー 国内プロジェクト本部
国内設計部 国内台車設計課
担当課長
橘 勝
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川崎重工業株式会社
車両カンパニー 国内プロジェクト本部
国内設計部 国内台車設計課
担当係長
釜谷 淳二
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川崎重工業株式会社
車両カンパニー 国内プロジェクト本部
技術企画部 デザイン課
担当係長
小菅 大地

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