仙台復興に「MAGターボの力」を

公開日2020.10.31

街に下水を溢れさせてはいけない、海にきれいな水を帰さなければいけない──。
仙台市の人口の約7割をカバーする大型下水処理施設・南蒲生浄化センターは、東日本大震災で甚大な被害を受けました。そこからの復旧を支えたのが「MAGターボ」だったのです。

杜の都・仙台は、下水道の先進都市でもあります。近代的な下水道の建設に着手したのが1899(明治32)年で、これは東京、大阪に続く全国3番目の早さ。1964年に供用開始となった南蒲生浄化センター(宮城野区)は東北最大の規模を持ち、1日の処理能力は40万m3に及びます。

同センターは仙台港にほど近い太平洋岸にあり、2011年3月11日の東日本大震災では甚大な被害を受けました。襲った津波は海側で10メートル、陸側でも4メートルを超える高さ。職員や作業員は全員、陸側の管理棟の屋上に避難できたことだけが幸いという状況でした。

完全復旧した南蒲生処理センター
完全復旧した南蒲生処理センター。海(太平洋)側に沈殿池、反応タンク、ブロワ・ポンプ棟、放流ゲートなど、陸側に汚泥処理施設、管理棟などが配置されている。新ブロワ・ポンプ棟内では6台の「MAGターボ M25」が稼働している。

職員らは翌日、自衛隊のヘリコプターに救助されましたが、安堵している余裕はありませんでした。放流機能の確保、瓦礫の撤去、電力の復旧、そして下水の浄化…。仙台市建設局 下水道事業部 南蒲生浄化センター 整備係 五十嵐 慎也 係長は、「当センターは、仙台市の人口108万人の約7割を担当する基幹施設。下水の大半が、標高で30メートルほど高い市の中心部から自然流入してくる構造のため、下水処理は途切れてはならない課題でした」と振り返ります。

既存の11台は全て使用不能になっていたため、仮復旧ではブロワ機能の確保が大きなテーマとなりました。ブロワを納入していた川崎重工は、11台のうち被害の比較的小さかった2台を修復したのに加え、「MAGターボ M35」の試作機1台を緊急供給。センターは順次、機能を回復していきました。

震災直後の南蒲生処理センター
2011年3月11日、南蒲生処理センターは大津波で各種の設備が水に呑まれて流され、甚大な被害を受けた。津波が引いた後のブロワ・ポンプ棟ではブロワの本体や配管は水没し、漂流物によっても被害を受けていた。

仮復旧による応急措置と併行して本格的な復旧も進められました。16年4月に完全復旧したセンターでは、「MAGターボ M25」6基が稼働し、高度な下水処理を支えています。「きれいな水にして太平洋に返すことが使命」(五十嵐係長)である同センターにとって、MAGターボは引き続き大きな役割を果たしています。磁気軸受機ならではの省電力、省スペース、静音性はもちろん、「トラブルが少なく運転状況の24時間モニタリングで安定稼働が実現している」(五十嵐係長)点が高く評価されています。 

五十嵐係長は今後への期待を次のように語ります。「人口減少に伴って、下水処理はますます効率向上とコスト抑制を求められます。環境面での課題の達成も不可欠ですから、エネルギー使用の削減は必須。ブロワも稼働する時間や台数、出力の制御がさらに重要になるので、AIによる最適化などに期待しています」。

仮ブロワ棟
被災翌年の10月、応急処置として設置された仮ブロワ棟。水没したブロワ11台のうち解体・修理した2台に加え、試作段階にあったMAGターボブロワ1台なども設置された。
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仙台市建設局
下水道事業部
南蒲生浄化センター整備係 係長
五十嵐 慎也

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