新時代のエネルギー供給を支える水素液化システム

公開日2018.01.31

次世代のクリーンエネルギーとして近年注目を集める水素ガスは、体積が大きく、輸送・貯蔵が難しい物質でもあります。その課題を克服するため、産業用の水素液化プラントを国内で初めて開発したのが川崎重工です。来たる水素社会の礎となる設備の仕組みと特徴に迫ります。

水素の大量輸送を支える重要インフラ

使用時に水しか出さない「究極のクリーンエネルギー」である水素。水素を「つくる」「はこぶ」「ためる」「つかう」の4つのステージで、川崎重工はそれぞれ独自の技術開発を進め、水素エネルギーのサプライチェーン構築を目指しています。

「水素液化システム」は、水素ガスを-253℃に冷やして液化する装置です。水素ガスは、重量は軽いものの非常にかさばり(体積が大きく)、そのままでは極めて運び難いのですが、液化すると体積を800分の1にでき大量のガスも効率的に運ぶことができます。つまり液化システムは、水素を大量輸送するための重要なインフラと言えるのです。

播磨工場内に設置された水素液化プラントの実証設備は、産業規模では初となる純国産の水素液化システムで、1日5tの液化水素を生産。実証試験の開始から3年を経て多くの知見をもたらしています。

その特徴は、①プロセス設計や運転制御を含む設計技術、②優れた断熱性能と気密性能を備えるコールドボックスの製作技術、③高効率・高純度・メンテナンスフリーの膨張タービンを支える高速回転技術、④液化ガスの高純度を維持するための純度管理システムや施工、保全管理技術、などにあります。

自ら設計・開発・製作し、3年間の実証実験では無事故・無災害を維持しています。「総合芸術」と評される開発・運用のノウハウは、来たるべき水素社会の礎になるものです。

産業規模で初となる純国産水素液化システム

2014年11月から実証試験を開始した播磨工場(兵庫県加古郡播磨町)内の実証設備。水素液化機のコールドボックスは、写真奥側に据えられています(青い円筒部分)。左手にあるのが液化水素を貯めるタンク。これまで無事故・無災害で実証試験を続け、安全のためのノウハウも着実に蓄積されています。

液化の原理は「水素が水素を冷やして液化する」

水素ガスは、熱交換器で熱を奪われて-253℃になると液化します。実証設備は、液化される原料の水素ガスとは別に、冷却用の窒素ガスと水素ガスが複数の熱交換器の間を循環して原料の水素ガスを冷やす「クロードサイクル」を採用しています

いわば「水素によって水素が冷やされる」という仕組みです。この原理そのものは新しいものではありませんが、実証設備は、産業規模の装置で設計から製作まで純国産で開発されたはじめてのものとなっています。

川崎重工の回転機械技術が凝縮された膨張タービン

液化のための最終段階で活躍するのが「膨張タービン」です。熱交換器を経て-196℃に冷やされた原料ガスは、膨張タービンが回る配管を通過すると圧力が下がり、同時に-253℃まで冷えて液化します。

この膨張タービンの回転部は、直径数cm、長さ10数cm程度の、自動車エンジンのターボチャージャーぐらいの小さな部品ですが、配管の中で液化されようとする水素ガスの力で浮き、毎分、10数万回という超高速回転を続けます。川崎重工のガスタービンなどの高速回転機械の技術が結集された部品なのです。

コールドボックス 宇宙衛星の“マント”に包まれる部品

液化のための熱交換器や配管は、「コールドボックス」と呼ばれる鉄製の円筒の中にあります。コールドボックスの大きさは直径4m、高さ12m。極低温となる内部は外気から断熱するために真空になっており、それを維持するシール部や、溶接部からの漏れを防ぐための精細かつ高品質な機械加工技術が駆使されています。

また、熱交換器や配管への輻射熱を抑えて断熱性能を高めるために、各部品は、宇宙衛星や宇宙服でも使われている金属箔のシート(スーパーインシュレーション)で包まれています。製作の際に内部にわずかな汚れも残さない清浄度管理も重要になります。

川崎重工業株式会社
プラント・環境カンパニー
低温プラント総括部
水素プロジェクト部
水素技術課
課長
小宮 俊博
川崎重工業株式会社
技術開発本部
水素チェーン開発センター
技術開発部
副部長
仮屋 大祐
この記事をシェアする