蒸気の力で産業を支える。小型貫流ボイラ開発の歩み

公開日2017.04.30

ボイラとは、水を蒸発させ、熱源やエネルギー源となる高圧蒸気を発生させる装置のこと。川崎重工グループの川重冷熱工業は、国内初の貫流ボイラを開発して以来、業界のトップランナーとしてその小型化と省エネ化に取り組み続けてきました。工場の動力源や設備空調を支える貫流ボイラは、小型であるほど設置しやすく、伝熱効率が高いほど省エネルギー化に貢献することができます。さまざまな「世界初」「業界初」の技術革新で、小型貫流ボイラの可能性を広げ続けてきた川重冷熱工業。その開発の歴史を追いました。

1951

コンパクトで高効率かつ安全。数々の課題に応えた国内初の貫流ボイラ「SG型」

国鉄の列車暖房用として開発された単管式貫流ボイラ。列車向けのためコンパクトで振動耐久性が高く、全自動で高効率、さらに高い安全性などさまざまな課題に応えた国内初の貫流ボイラです。その取り扱いのよさから一般産業用にも拡大し、特に信頼性の高さから発電所の補助ボイラとして活躍しました。

1977

SG型を多管式に。大容量蒸気への対応を可能にした「SH型」ボイラ

SG型の制御技術をそのままに多管式にして小型化と高効率化を実現。「給水脱気器(水の溶存酸素を取り除く装置)」兼「気水分離器(水分と蒸気を分離する装置)」を新開発したことで大型ボイラ並みの耐久性を確保。さらに複数台を一度に制御するシステムの開発で大容量の蒸気にも対応できるようにしました。

1996

「フィン付チューブ」開発でさらなる小型化を実現した、「KF型」ボイラ

SH型の構造を維持しつつ、「フィン付チューブ」の開発によりさらに小型化に成功。SGボイラと同じ伝熱面積で約2.6倍の蒸発量(2,000kg/時)を発生できます。定格のボイラ効率(熱効率)も8ポイントアップの98%にまで向上しました。

2000

給水も自動制御に。世界初の高性能大型多管式貫流ボイラー「IF型」

2015年のIF-F型

SG/SH型で採用されていた自動燃焼制御の性能を向上させる一方、給水制御にも自動制御を採用。さらにSH/KF型の本体構造を維持しつつ伝熱性能を向上させたことで、世界初となる高性能で大型の多管式貫流ボイラ「IF型」の開発に成功しました。大型ボイラ並の機能・性能を備えているにもかかわらず、ボイラ技士免許が不要というユーザーフレンドリーな製品でもあります。

2016

小型貫流ボイラで国内初の15年保証を実現した、「WF型」ボイラ

川重冷熱工業の技術の粋を集めた最新鋭機が小型貫流ボイラ「WF型」。ボイラ効率は100%以上、蒸気の乾き度が99.5%以上という驚異的な性能を発揮します。また動力源制御の見直しなどにより消費電力を大幅に低減し、軽量化やコンパクト化も実現した。小型貫流ボイラでは国内初の15年保証製品です。

1978年に発足した川重冷熱工業の母体は、川崎重工の汎用ボイラ部門と横山工業(1966年 川崎重工へ合併)、汽車製造(1972年に川崎重工へ合併)の3社。横山工業は、ドイツで開発された強制貫流ボイラ「ベイソンボイラ」の技術を導入し、汽車製造は、1951年に国鉄の列車暖房用として国産初の蒸気発生機を生み出していました。合併により川重冷熱工業は、開発から設計、製造、販売・サービスまですべての機能を備えるボイラ専門メーカーとして地歩を固めます。トップレベル3社の合併による新会社であっただけに、その開発力は群を抜いていました。

1996年には、ボイラ本体の水管(チューブ)にフィン(拡大伝熱面)を多数積層して伝熱面積を広げた「フィン付チューブ」を開発。同じ伝熱面積で初期のSGボイラの約2.6倍もの蒸発量を実現した「KF型」を送り出します。

2000年には、ボイラの燃焼量の自動制御(燃焼PID)だけでなく、給水量の自動制御(給水PID)も採用した「IF(Ifrit)型」を開発。これは世界で初めてとなる大型(蒸発量6,000kg/時)の多管式貫流ボイラで、高い耐久性能を持ちます。2015年発売の「IF-F型(イフリートフェルサ)」からはその耐久性の実績を元に、15年製品保証を開始しました。

さらに2016年には、貫流ボイラや大型ボイラの技術の粋を集めた小型貫流ボイラの最新鋭機「WF型」を投入。前身のKF型に比べて消費電力を44%、重量を30%、設置面積を10%、それぞれ低減したり軽量化しています。

川重冷熱工業は国内初の貫流ボイラを開発して以来、さまざまな「世界初」「業界初」を生み出し、業界のトップランナーとして技術革新をリードしています。

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