空気や蒸気、ガスなどに圧力を与えて送り出すブロワ。その用途は、化学・石油・製鉄装置の空気源、各種ガスの吸引・圧送用、廃液・排水処理用、都市下水道曝気用など多岐にわたります。川崎重工は、ブロワの高効率化を実現する斜流型羽根車を開発し、これまで1,300台以上のブロワを供給してきました。そして今、川崎重工は成熟したと言われるブロワ分野に「MGM蒸気圧縮機」を送り出し、さらなる高効率化を実現しています。
蒸気ブロワで新たな革新
蒸気圧縮機としての利用における徹底した省エネ化を実現した「MGM蒸気圧縮機」。その最大の特徴は、圧縮装置が多段になっていることです。1段目で圧縮された蒸気は2段目の圧縮部に入り、圧縮率が高められます。もちろん斜流型羽根車の開発を契機に実現したブロワの小型化や慣性モーメントの低さ、低振動・低騒音などの特徴も受け継がれています。回転機械の安定特性を左右するロータダイナミクスに対して最新の設計技術が導入された成果です。
蒸気の場合、腐食性が問題となります。また気体である蒸気が水に変化するドレン現象が起きると、羽根車などに大きな負担がかかります。MGM蒸気圧縮機では耐腐食性や剛性の高い素材の活用により課題に応えました。
MGM蒸気圧縮機は、自己蒸気圧縮式の蒸発装置、蒸気圧縮機式造水装置、ヒートポンプや排蒸気・低圧蒸気の再利用などでの活用が進んでいます。
Kawasakiの技!応用展開で革新的な省エネを蒸気圧縮機を活用したMVRシステムの例
MVR型蒸発装置とは、自己蒸気機械再圧縮型(Mechanical Vapor Recompression)の蒸発装置。図はMVRシステムの一例ですが、製品を濃縮する際、多くの場合はボイラからの熱源を使います。しかしMVRシステムでは濃縮塔(蒸留塔)から排出された低圧蒸気を蒸気圧縮機によって断熱的に圧縮し、昇圧・昇温した圧縮ベーパー(蒸気)を自身の加熱源として再利用します。蒸気圧縮機が蒸気を圧縮するためのエネルギーは、ボイラで蒸気を発生させるエネルギーに比べて非常に小さいため、エネルギー消費量を大幅に低減できます。
見方を変えれば、MVR型蒸発装置は、従来は排気されていた低圧蒸気の蒸発潜熱を蒸気圧縮機で昇温・昇圧して自らのプロセスに再利用することで画期的な省エネルギーを実現できるシステムなのです。
インレットベーン
1段目の羽根車の直前に設けられている部品。部分負荷効率のよい流量制御を実現します。
羽根車は2種類を使用!
効率のよい流量制御を実現するために1段目に斜流羽根車を、また2~4段目以降には遠心羽根車を使用します。数値流体力学(CFD)に基づき最適形状を決定し、効率を一段と高めています。
素材は用途に応じてステンレス鋼、アルミ合金、チタン合金などを使い分けています。
高速ロータ
高速ロータは、増速歯車の小歯車と一体の軸で、その両端に羽根車が取り付けられています。材料はクロムモリブデン鋼で、熱処理によって強度が確保されています。専用のバランシングマシンによって動的バランスを取り、きわめて振動の少ない安定した運転を可能にしています。
増速歯車
ハスバ歯車を使用しており、電動機の回転速度を羽根車の回転速度まで1段で増速します。シェービングによってきわめて精度の高い歯形に仕上げられ、表面硬化処理がなされています。このため振動、騒音共に低く長寿命の設計になっています。
軸受
炭素鋼にアルミニウムまたはホワイトメタルなどを裏張りしたもので、川崎重工が長年にわたって開発したティルティングパッドを用いているため、高速回転時も優れた安定性を発揮します。
MGM蒸気圧縮機の動力源であるモータを蒸気タービンと連結して回し、蒸気を無駄なく活用する仕組みもできます。
機械ビジネスセンター 空力機械部
ブロワ設計課
基幹職