船舶、車両、航空機、モーターサイクル、ロボットなど、多様な事業を展開し、世界の産業を支えてきた川崎重工。近未来モビリティ総括部は、労働人口が減少し人手が不足する日本のはたらき方を解決するソリューションの開発に取り組んできました。今回は、サービスロボット「FORRO(フォーロ)」の開発の経緯を、プロジェクトリーダーの小倉淳史氏にインタビューしました。
人が人にしかできない仕事に専念できる環境をつくりたい。
アイデアの原点は、「人が人にしかできない仕事に専念できる環境をつくりたい」という強い想いでした。ロボットができることはロボットに任せられる。そのようなシステムを目指しました。
元々は、人手不足に困る物流業界へのソリューション提供を軸に、屋外の自動配送を実現するシステムを考えていました。しかし、コロナ禍になり医療業界、病院から開発を期待する声が入ってきました。
クラスターが発生することにより、診療を休むことができない病院の増加。元々人手不足であった医療業界にコロナが追い打ちをかけている状況でした。そのような課題を解決するために、「FORRO」を活用した配送サービスを開発しました。
人と同じように施設を移動できるサービスロボットの誕生。
FORROという名前は、川崎重工業のキャッチコピー「カワる、サキへ。Changing forward」の「Changing FORward RObot」に由来しています。FORROは、決められた動きをするのではなく、搭載したセンサーで周囲の状況を把握しながら荷物を配送することができるロボットです。エレベーターでの人との相乗りや途中下車に強みを持ち、人の多く行きかう広い建物内においてもスムーズに走行することができます。そのため、コロナ禍で喫緊の課題となっていた薬剤や検体などの院内配送作業に一役買うことになりました。
現場の課題に寄り添ったサービスロボットとなることを目指して、ロボット自体を販売するのではなく、FORROを活用した配送サービスをサブスクリプションで提供する事業を立ち上げました。今では、人に代わって配送ができるロボットになっていますが、病院という複雑な建物内で使えるロボットになるまでには、多くのトライ&エラーを繰り返してきました。24時間体制で病院に張り付き、少しでも医療従事者の作業時間を短縮できるように、ロボットの動きに微調整を加える日々。試作1号から2年で4回の改良を重ねました。
目指すのは、人と共存するロボット。
FORROに対する期待の声は、人手不足に悩む現場からも上がってきています。FORROを導入した藤田医科大学の瀬戸孝一教授は次のように語っています。「臨時で薬剤や検体を運ぶことになった時、これまでは看護師さんや病院スタッフが運び、時間をとられていました。配送にロボットが関わることで、看護師さんの業務の軽減につながる、と考えています。」
実際の医療現場で、多様な方々が行きかう環境で自律的に動くことと止まることを選択でき、人の役に立てる。まさに、“人と共存できる”という大きな強みを持つロボットを実装することができました。病院のように、人の往来が多く、構造も複雑な施設でも人と接触しない安全なシステムが組み込まれていて、ホスピタリティを持ち合わせたロボットになったと言えます。
「今後はFORROが人の役に立つことによって、労働人口減少社会という大きな社会課題の解決に寄与していきたいと思っています。」と、小倉氏はインタビューを締めくくりました。
*本記事は、2024年4月に放送されたTBS「アイデアの扉」の放送内容を元に制作しています
社長直轄プロジェクト本部
近未来モビリティ総括部