日本で初めて産業用ロボットを実用化した川崎重工が、「ロボットの次なる時代」を見据えて2015年に発売したのが、人共存型双腕スカラロボット「duAro」です。その名の通り2本のアームを持つduAroは、人が両腕で行う作業を再現でき、人とロボットが安心して共存作業できるように工夫が凝らされています。
「ロボットは無理」と言われた現場に
労働力不足が深刻になるなかで、産業用ロボットの力を借りたいと願う現場はたくさんあります。しかし、その導入にはいくつも課題がありました。例えば電気・電子分野では、製品のライフサイクルが短いため準備期間と費用対効果のバランスが取れず導入が進みません。また全国の99.7%を占める中小企業の方々も、猫ならぬロボットの手を借りたいところですが、専門的な知識を必要とするために諦めている方も多かったのが現実です。
duAroは、そんな課題に応えられるように作られました。最高時の「身長」は1m70cm。「体重」は200kg。人1人分のスペースがあれば自由に配置できます。作業手順は「手取り足取り」かタブレットで簡単に覚えさせることができ、衝突検知機能があるので人と並んで作業しても安全です。左右のアームが異なる作業を処理することもでき、なにより導入しやすいリーズナブルな価格がduAroの人気を後押ししています。
安全と使いやすさを追求したduAroは、発売以来、電子基板のネジ締めやおにぎりの番重詰めなど、ロボットが必要とされていた現場で活躍しています。明日の日本のものづくりやサービスは、duAroと共にある、と言える日もくるかもしれません。
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多様な作業を思いのままにロボット化
duAroのアームに多様なツールを装塡(そうてん)できることで、duAroもまた多様な作業ができるようになっています。これまでの導入実績でも、電子基板への部品実装、おにぎりの番重詰め、タッチパネルの動作・反応検査などと多彩で、活躍の場はますます広がりそうです。
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Kawasakiの技! 「両腕・両手の偉大さ」を双腕に
duAroの双腕は、まさに人の両腕や体の動きを再現しています。腕を外側に最大に広げたときの幅は76cm(両腕間で152cm)。これは作業者の平均的な作業範囲を元に設定されています。
両腕を使うことで簡易的なハンドでも大型のワークを搬送したり(①)、同軸構造によってロボットの後方設備へもアクセスでき(②)、両アームで別々の作業を行うこともできます (③)。例えば電子基板を左腕で押さえて右腕でネジを回すといった作業が可能で、これにより作業のタクトが短縮されるとともに、基板を押さえつけるツールが不要となり、システムが簡素化できるのです。
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Kawasakiの技! 柔軟に対応可能なダイレクトティーチング
ロボットの腕の動きを制御する制御システムは、箱形の台車部分の中に組み込まれており、これが生産ラインのどこにでも投入できる柔軟さを実現しています。
ロボットの動作の教示は、現場で作業者が手順に沿ってアームを掴んで動かしながら教える「ダイレクトティーチ機能」と、アンドロイドタブレットから指定する2通り。いずれも専門知識は必要としないシンプルなものになっています。ちなみにコントローラが格納されている台車部分の重さは、ロボット全体の75%(145kg)ほどで、どっしりと安定した稼働を支えています。
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安全柵がいらない低出力モータを採用
2本のアームを動かすモータは、それぞれ「肩」「肘」「ハンド」の各部に設置され 、モータの回転数を制御したりすることで腕の動きが創り出されます。
アーム部分は柔らかいクッションカバーで覆われ、人に近い左右の領域を「低速動作域」として設定すると、「低速動作域」ではゆっくりと、中心部では高速で動くことが可能になります。さらに人との接触を瞬時にとらえ、腕を停止させる「衝突検知機能」を備えるなど、安全対策には万全を期しています。
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使い慣れたツールもOK!
duAroには、使い慣れたツールを装塡することもできます。それを可能にしたのが「ベースチャック」と「変換アダプタ」です。人が行っている作業を素早くロボット化したいという要望に応える工夫が、こうした部分にも実現されています。
上下の動きも自動でスムーズに
duAroの2本のアームは水平方向に加え、Z軸(上下)方向にも動かすことが可能です。片腕だけで2kgを持ち上げる力を持っています。さらにZ軸の動きをダイレクトティーチングすることができ、エンドエフェクターに取り付けた治具の重さも自動で計測するなど、Z軸の動きをスムーズにする機能が組み込まれています。
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キャスター
台車のついた本体は、ハンド ルを利用することで一人での配置変更が可能です。
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