社会課題にアイデアで挑む。屋内位置情報サービス「iPNT-K」

公開日2022.07.27

川崎重工が2021年8月に新組織を立ち上げ、サービス提供を開始した屋内位置情報サービス「iPNT-K」(アイピントケイ)。これまでGPSの電波が届かない屋内で位置情報を得るためには、多額の測位インフラ整備が必要でした。iPNT-Kは身近にあるWi-FiやBluetoothの電波を利用することで、いつでもどこでも位置情報の取得を可能とした新サービスです。iPNT-Kのアイデアの生みの親であり、熱烈峻厳に事業化に乗り出した社長直轄プロジェクト本部PNT推進部長の野田孝仁さんに、このアイデアが生まれた背景を聞きました。

2035年には1兆1,700億円規模に。拡大する屋内位置情報サービス市場

生活・就業環境の改善や利便性向上などの観点から、屋内や地下における人やモノの位置情報の活用、いわゆる人流や動線把握への需要が年々高まっています。2035年には、国内市場規模が1兆1,700億円※1にまで成長すると予測されています。

ところが、屋内にはGPSの電波が届かないため、屋外と同じように位置情報が利用できる訳ではありません。そのため屋内で位置情報を得るには、施設管理者がビーコン機器等の電波を発信する特別な装置を施設内に万遍なく設置する必要がありました。しかし、設置エリアや利用者数などに応じてかかる初期費用や維持費がユーザーの負担となるため、屋内位置情報のプラットフォーム整備がなかなか進まないという課題があったのです。

※1:シード・プランニング「屋内位置情報サービス市場の動向と将来展望2020」より

ビジネスアイディアチャレンジから生まれた新規事業「iPNT-KTM

そんな中、川崎重工が実施する新規事業の社内公募制度「ビジネスアイディアチャレンジ」から、2021年5月に屋内位置情報サービス「iPNT-KTMが誕生しました。川崎重工 社長直轄プロジェクト本部 PNT推進部の野田部長は、アイデアのきっかけについてこう話します。

「特殊な装置、専用端末を開発して、それを皆さんに利用してもらうのではなく、誰もが普段から使っているスマホのWi-FiやBluetoothなどを利用して、あたかも屋内にGPSがあるかの様に、いつでもどこでも屋内で位置情報が使えるサービスを作れないか。さらに、ビジネスとしても成立させながらも、普段の生活に当たり前の様に浸透し、かつ世の中の利便性向上に必要不可欠なサービスとなるためには一体どのようにすれば良いか。このようにして、考え抜いた先に生まれたのが、専用端末ではなくスマホなどの汎用端末を使って、いつでもどこでも屋内位置情報が利用できるサービスでした。」

現在、屋外ではスマートフォンなどでGPSによる位置情報を利用できますが、これを屋内でも可能にするのがiPNT-KTMです。屋内の人やモノの動きをリアルタイムに「見える化」することができ、価格面でも導入のハードルが低く、初期費用も不要で、技術面においても非常に画期的なサービスです。

iPNT-Kとは?

iPNT-KTMは、川崎重工の社内公募制度「ビジネスアイディアチャレンジ」から生まれた屋内位置情報サービスです。Mapxus社と協業し、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)の電波が届かない屋内での位置測位を、特別な装置を設置することなく、対象空間の電波を利用する技術によって実現しました。

測位インフラの構築やメンテナンスが不要なため、すぐに屋内での位置情報の利用が可能となり、顧客の位置情報を利用したビジネス開発コストの大幅な削減に寄与します。

iPNT-KTMによって、川崎重工は新たなビジネスモデルとなる屋内位置情報サービスを提供し、便利で安全安心な社会の実現を目指しています。

位置情報市場のゲームチェンジャーに

野田部長はiPNT-KTMが目指すビジョンについて話します。

「iPNT-KTMは位置情報を扱う市場でゲームチェンジャーとなり得るサービスで、現在は全国約1,300カ所の約1万5,000フロアで位置情報が取得できるようになっています。屋内どこでも位置情報が取れる環境を構築することで、当社は屋内位置情報サービスのデファクトスタンダードとしてiPNT-KTMを展開することを目指しています。」

屋内位置情報をショッピングセンターなどの商業施設や駅・空港などで活用することで、今後は子どもや高齢者の見守りや、施設利用者への最適移動ルートの提案、避難経路の誘導も実現できると言います。企業向けにもオフィスや倉庫内などで働く従業員の業務効率化など、さまざまな分野での活用が期待されています。 

新規事業への挑戦について、野田部長はこう語ります。

「夢を求めるところに、必ず実現できる道あり、その夢へのプライドが人の心を動かす」。これまでに前例のない挑戦であったとしても、必ず実現できると信じて夢を持ち続ければ、必ずその道は開けると信じています。その夢へのプライドが人の心を動かす、このような気持ちで、屋内位置情報サービスの提供に挑み続けます。」

屋内位置情報(屋内測位/屋内GPS)とは?

屋内位置情報(屋内測位/屋内GPS)とは、屋内における人・モノの位置を測定することです。そこから得られた位置情報を用いることで、ナビゲーションや、人・モノの動線解析、特定位置に存在する人へのプロモーション配信などのさまざまなサービスを提供することが可能になります。

屋内ではGPSの電波が届きにくいため、屋内での位置情報はビーコン製造会社などが⼀括で位置情報の環境を構築し提供することが⼀般的で、屋内位置情報システムは屋外に比べて大きく遅れており、ビーコンなどの機器設置を含めたインフラ整備コストが普及の課題です。

一方で、測位・ポジショニングシステムのプラットフォームがあれば、屋内位置情報サービスの市場は急速に成長すると期待されています。

※:本記事は、2022年3月31日に放送されたTBS「アイデアの扉」の放送内容を元に制作しています。

川崎重工業株式会社
社長直轄プロジェクト本部
PNT推進部
部長
野田 孝仁
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