伝説のエンジニア ピエルルイジ・マルコーニに訊く。ビモータの魅力を知るための一問一答

公開日2022.02.25

カワサキとタッグを組み、新章をスタートさせたイタリア孤高の高級モーターサイクルブランド、ビモータ。COO(最高執行責任者)として新生ビモータを率いるのは、名エンジニアとして知られるピエルルイジ・マルコーニ氏です。1990年代に「TESI」をはじめとした名車の数々を手掛けたマルコーニ氏は、21世紀にどんなモーターサイクルを作ろうとしているのでしょうか。モーターサイクル界の伝説に、8つの質問をたずねました。

ビモータのファクトリーにピエルルイジ・マルコーニの姿が帰ってきた(写真中央)。ファクトリーの場所はもちろんイタリア・リミニ。新生ビモータもまた、職人たちの手により1台ずつハンドメイドで作られていく

Q1. マルコーニ氏は、ビモータで最初に手掛けたプロダクトを「TESI」と名付けました。その名前に込めた意味を教えてください。

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マルコーニ氏

「TESI」はイタリア語で“論文”を意味します。大学に通う全ての学生が卒業するにあたって執筆するものですね。卒業論文、学位論文と訳されることもあるでしょう。私、ピエルルイジ・マルコーニと(友人の)ロベルト・ウゴリーニは、学位を取得する際にボローニャ大学の教授へモーターサイクルの新しいコンセプトをまとめて提出しました。そういった理由から、(そのコンセプトを使って)ビモータが最初のプロトタイプを試作したとき、即座に「TESI」と名付けたのです。

ピエルルイジ・マルコーニの手により1990年に誕生した「TESI 1D」。センターハブステアリング機構を採用した革新的モデルは、モーターサイクル業界にセンセーションを巻き起こした

Q2. ビモータにとって、イタリアンクラフトマンシップはどれくらい重要なものなのでしょうか。

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マルコーニ氏

数千年もの昔から続く歴史をもつ伝統的なイタリアの職人技術、すなわちイタリアンクラフトマンシップの価値は世界中で評価されています。我々は、常にものづくりにこだわる会社であり続けてきました。

最高のパフォーマンスをもつモーターサイクルのための特別なコンポーネンツを、自分たちの手で作ることからビモータはスタートしました。やがてコンプリートモデルを手掛けるようになっても、クラフトマンシップの精度はそのまま継承してきましたし、そのポリシーは今も変わりません。

クラフトマンシップにこだわってものづくりを行うことには利点があります。全てのビモータ製モーターサイクルは人間が作り、人間がチェックします。つまり、細部に至るまで職人の手を経るためにクオリティを高めやすいのです。

ビモータのモーターサイクルは水滴のように、まったく同じように見えて、実は1つとして同じものがありません。

イタリア・リミニのファクトリーで職人が1台ずつハンドメイドするビモータのモーターサイクル。“走る宝石”と呼ばれる通り、細部に至るまで一切の妥協なく仕立てられる

Q3. カワサキ製エンジンの美点や他社メーカーとの違いについて教えてください。

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マルコーニ氏

これは難しい質問ですね。

他社製エンジンとの違いで最も重要なのは、カワサキ製エンジンは多くの電子デバイスを備えた状態で供給されるという点と、すでに優れた電子制御技術をベースにビモータが開発をスタートできる点です。

公道で乗ることのできる世界最高のパフォーマンスを備えたエンジンであり、モーターサイクル市場で一番の選択肢といえるでしょう。

Q4. 2021年のEICMAショー(ミラノ国際モーターサイクルショー)で「KB4」の派生モデル、「KB4 RC」が発表されました。「TESI H2」にも新バージョン追加の可能性はありますか。

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マルコーニ氏

EICMA 2021で披露したコンセプトスケッチに見られるように、我々はあらゆる可能性を追求しています。

でも、その話をするにはまだちょっと早すぎるかもしれませんね。まずは「TESI H2」と「KB4」のライディングを楽しんでいただけたらと思います。

ビモータが2021年のEICMAショーで公開したコンセプトモデル「KB4 RC」。ビンテージスピリット薫る「KB4」をベースにしたカフェレーサーはサプライズ出品されて話題を呼んだ

Q5. 新生ビモータは今後どのようなモーターサイクルを生み出していくのでしょうか。

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マルコーニ氏

さまざまなセグメントに参入していきたいと考えています。もちろん常に最高のパフォーマンスを備えたカタチで。

我々の言う“パフォーマンス”とは、必ずしも最高出力の数値だけを意味するものではなく、ブレーキの性能やハンドリング、車両重量、TESIのように革新的なシャシー、もしくはレーサーレプリカのシャシーのようなものを含めた意味合いです。

Q6. ハブセンターステアリングという機構に着目した理由を聞かせてください。

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マルコーニ氏

若い頃から、前輪と後輪をつなぐフレームが1mもの長さに達していることが理解できませんでした。

前後ホイールをできるだけ短い距離で結ぶことはできないだろうか? ステアリングとサスペンションの機能を分離できないだろうか? そう考えた結果、TESIプロジェクトのコンセプトが生まれました。

ピエルルイジ・マルコーニが21世紀に蘇らせた「TESI」。新生ビモータのフラッグシップモデルである「TESI H2」は、量産二輪唯一のスーパーチャージドエンジンであるカワサキ「Ninja H2」のユニットを搭載している

Q7. あなたが考える「理想のモーターサイクル」はどんなものですか?

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マルコーニ氏

どのようなパフォーマンスであっても、(理想のモーターサイクルの)デザインは技術的な要件に基づいたものでなければなりません。

Q8. ビモータを愛するファンに向けて、メッセージをお願いします。

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マルコーニ氏

もちろんです!

我々は、全てのビモータファンに喜んでいただけるよう、懸命にモーターサイクルづくりに取り組んでいます。最新の2モデルは、きっと皆さまを驚かせることができたと信じています。

これからも、新しいビモータのモーターサイクルで皆さまへ驚きをもたらし続けていきたいと思います。ビモータの革命はこれからも続いていきます。

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ビモータ S.p.A. COO(最高執行責任者)
ピエルルイジ・マルコーニ
PROFILE

イタリア・リミニ出身。1983年にビモータへ入社。同社でテクニカルディレクターを務めた後、1998年にアプリリアの研究部門へプロジェクトリーダーとして転身。2001年にはベネリのテクニカルディレクターに着任、2005年にベネリ Q.J.の副ゼネラルマネージャーとなり、以降もさまざまなポストを歴任。2019年、ビモータS.p.A.のCOOに任命された。

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